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フリーキャッシュフローとは、事業を進めていく中で、会社が自由に使うことができる資金です。
具体的には事業活動の結果獲得した資金のうち、事業継続のために必要な設備資金を除いた資金のことを言います。
フリーキャッシュフローは、経営分析のなかでも特に重要な財務指標で、その理由は算出目的にあります。
フリーキャッシュフローを算出する目的は、主に「新規事業への投資資金」を確認したり、「株主への配当」を事前に把握したりと色々ありますが、なかでも一番重要なのが「借入の返済資金の確認」です。
借入の返済にあたっては、支払利息は費用となりますが、元金の返済については費用とならず、税引後の利益から捻出することになります。そのため、その返済金額に対してどのくらい手元資金の余力があるかを知ることは、今後の経営を進めていくうえで、とても重要になります。
フリーキャッシュフローの計算には何通りかあり、統一的なものはありません。
ここでは、代表的な2つをご紹介いたします。
フリーキャッシュフローは、その名称にもあるとおり、キャッシュフロー計算書から算出するのが一般的です。
商品販売やサービスを提供し、主たる営業活動の結果回収した現金預金の合計額である「営業活動によるキャッシュフロー」と、固定資産の購入による支出や、有価証券の売却による収入の合計額である「投資活動によるキャッシュフロー」を合計した金額により、算出することができます。
フリーキャッシュフローは、会社が実際自由にすることができる資金を表しているため、この方法が一番正確に出すことができますが、キャッシュフロー計算書はその他の財務諸表である貸借対照表や損益計算書とは異なり作成が義務付けられていないため、キャッシュフロー計算書がない会社や個人事業主は、この方法では算出することができません。
そのための代替として、「損益計算書から算出する方法」をご紹介いたします。
損益計算書から算出する方法は、フリーキャッシュフローを算出する際の簡便法として用いることができます。
経常利益を用いることで、営業活動による利益と営業外活動による損益(売買目的有価証家の売却や、配当金の受取、利息の支払いなど)を表し、実効税率(34%:東京)分を除外することにより税金支払分を考慮し、支出を伴わない費用である減価償却費を加算することによって、フリーキャッシュフローを簡便的に計算する方法です。
損益計算書はどの会社であっても作成義務がある財務諸表であるため、この計算方法を使えばどの会社でもフリーキャッシュフローを算出することができます。
また、使用する損益計算書は決算時のものでなくても構いません。
月次であったり四半期、中間時に試算表を作成している会社は、その時点でフリーキャッシュフローを計算し、その年の返済金額と比較することもできます。
損益計算書から算出できるフリーキャッシュフローは、すぐに算出することが出来てとても便利ですが、デメリットが一点あります。
「損益計算書とは」でもお伝えした通り、キャッシュフローは実際の「儲け」ですが、損益計算書は収益と費用の「差額」です。
そのため、売上債権や仕入債務などが大きい場合には、実際のフリーキャッシュフローとは大きく乖離してしまう可能性があるので注意してください。
フリーキャッシュフローを算出する一番の目的は、『借入金の返済原資が会社にあるかどうか』であると先ほど説明しましたが、もし足りないようであれば次のような対策をとってみましょう。
仕入債務は『営業活動によるキャッシュフロー』の区分に表示されています。
商品を購入したりサービスを受けると、代金決済までの間は資金の支払が猶予されています。そのため、その期間を延ばすことができれば、それだけ会社の手元に資金がある期間が長くなります。
売上債権は『営業活動によるキャッシュフロー』の区分に表示されています。
商品を売却してからその決済日までの期間は、資金は債権に形を変えているため会社の手元にはありません。この手元にない期間を短くすることができれば、今後の資金繰りが安定して、資金体力のある会社となっていきます。
棚卸資産は『営業活動によるキャッシュフロー』の区分に表示されています。
商品を購入してから販売するまでの期間は、資金は棚卸資産に形を変えていて、すぐに現金化することは出来ません。棚卸資産の状態のまま放置しておくと、不良在庫になってしまい資金を塩漬けにしているようなものです。
不良在庫とならないようにするためには、特に季節商品などはセール等を行って積極的に売り出してください。本来の売上よりも低くなってしまうかもしれませんが、資金が棚卸資産に滞留していることに比べるとマシです。
経営分析上では、棚卸資産が長い間不良在庫化しても、財務指標には悪い結果として表れにくいため、対応するのが遅くなりがちです。そのため、棚卸資産については、時系列で判断し、例年に比べて多くなってきているときは、早い段階で改善策を出しましょう。
有価証券の売却は『投資活動によるキャッシュフロー』の区分に計上されます。
もし有価証券を保有していて、いま売却しても損失が出ないようであれば、返済原資とするために売却することを検討してみてください。有価証券などの投資は、あくまで資金に余裕がある状態で行うものであり、フリーキャッシュフローが足りないようなときにまで持ち続けるものではないからです。
ただし、株価が上昇中であったり、売却することにより多額の損失が出てしまうようなときで、フリーキャッシュフローが返済額より少ないとしても、経営危機に陥っている状態でないならば、売却は見送ってもよいと思います。
設備投資による購入や売却は『投資活動によるキャッシュフロー』の区分に計上されます。
設備投資は会社を成長させるための先行投資であるため、購入予定があるにも関わらずそれを先に見送ってしまうと、後々生み出す利益を圧迫することになってしまいます。
そこで、設備の購入を中止にするのではなく、この機会にまずは会社の設備を全て見直してみてください。
設備をあらためて見直してみると、あまり利益獲得に貢献していない設備や遊休状態の設備があったりします。そういった設備を処分することで、売却資金を獲得できますし、維持管理のための固定費用も削減することができます。
①②③については、『財務指標④ 現金循環日数』にも記載していますので、ご参考ください。