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中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が提供している「小規模企業共済」「倒産防止共済」は、同じ組織が提供していることもあり、結構混同されがちです。
今回は、この両者、小規模企業共済と倒産防止共済の特徴を比較してみました。
実は、結構異なる部分があります。
主に個人事業主の方向けに書いているため、現在ご検討の方はご参考ください。
・小規模企業共済とは?
・経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは?
・両者で異なる部分は?
・まとめ
はじめに、少しだけ弊所の紹介をさせてください。
弊所では、ただ申告書を作成するだけでなく、資金面も考慮しながらお客様と打ち合わせをしています。
節税をするときには、ただ支出をして納税額を減らすだけの無駄な節税を極力避け、お客様と相談しながら、後々有益となる節税をご提案いたします。
また、税務申告のほかに、経営分析や資金繰りにも力を入れております。
資金計画をこれから実施していこうという方、再度検討したい方など、資金体力のある会社づくりを目指したい方、お気軽にご連絡ください。
小規模企業共済とは、中小機構が定める小規模の事業に属する会社役員や個人事業主が加入できる、一種の外部積立退職金制度です。
拠出した掛金が、全額所得控除となり「掛金×税率」分の税金が安くなります。
共済加入者は、その拠出期間・金額を基に中小機構より貸付を受けることができます。
あらかじめ定められた事由に従って、中小機構より振り込まれます。振込入金の種類は「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約返戻金」の4種類あり、それぞれ入金額が異なります。
小規模企業共済もiDeCoと同様に、事由の種類や入金の受け取り方(一括・分割)によって所得の種類も変わり、納税する金額も異なってきます。
共済金を受け取る場合は、拠出期間が36ヶ月を超えれば元はとれますが、もし65歳未満で自主的に解約する場合には共済金でなく解約手当金となり、拠出期間が240ヶ月超でないと掛金を下回った金額を受け取ることになります。
・共済金A・共済金B:一括⇒退職所得(※) 分割⇒雑所得(公的年金等)
・準共済金:退職所得(※)
・解約手当金:一時所得
(※)控除額は掛金の拠出期間による
経営セーフティー共済も小規模企業共済と同様に、中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営しており、取引先の倒産に関するリスクを軽減するための制度です。
拠出した掛金が、全額損金又は必要経費となり、「掛金×税率」分の税金が安くなります。
共済加入者は、主に倒産した取引先の債権額・返済期間・それまでの拠出金額を基に中小機構より貸付を受けることができます。
借入しなくとも、解約することによって解約返戻金があります。
解約返戻金は、12ヶ月未満の拠出では1円ももらえませんが、40ヶ月以上拠出していれば掛金の全額が戻ってきます。戻ってきた解約返戻金は、事業所得などの総収入金額に含まれます。
詳しくは、『【節税】経営セーフティ共済加入で貯蓄を増やしましょう』をご覧ください。
小規模企業共済と経営セーフティ共済は、中小企業基盤整備機構がともに提供していますが、それぞれ異なる点が多々あります。
ここでは、その中でも、特に加入の判断要素になるであろう異なる部分を重点的に取り上げています。
小規模企業共済も経営セーフティ共済もともに中小機構に掛金を拠出しますが、税務上の取り扱いが異なります。
小規模企業共済の掛金は、退職金を目的としており、税制上優遇するために、その全額を所得から控除することが出来るよう、事業所得や不動産所得などの所得を合計等した金額(以下、総所得金額といいます)から控除する『所得控除』になります。
一方、経営セーフティ共済は、取引先の倒産に伴って貸し付けをする制度であるため、事業活動の一部としての性格が強いことから、個人事業主なら事業所得の必要経費、法人なら損金として、その事業年度の所得計算上の費用として扱われます。
そのため、拠出時の取り扱いは、課税所得を構成するうえで控除(所得控除)となるか、所得計算を構成するうえで控除(必要経費又は損金)となるか異なります。
国民健康保険料は、前年の確定申告に記載のある総所得金額を基に計算されます。
そのため、経営セーフティ共済の掛金は所得計算に含まれますが、小規模企業共済は所得計算に含まれません。
もし、税金だけでなく国民健康保険料も少なくしようとするのであれば、経営セーフティ共済を選択する方が有利になります。
小規模企業共済は、その受け取りについて4種類設けられており、共済金であれば36ヶ月拠出し続ければ掛金合計額以下の受給金になることはありませんが、もし任意解約である場合には、最低240ヶ月拠出し続けなければ戻ってきません。(それでも、一番少ない場合だと掛金合計額の8割程度です)
小規模企業共済は退職金の支給をメインで考えているため、退職金の扱いとなる共済金については『拠出期間』『納税額』がとても優遇されていますが、そのぶん途中解約の場合は厳しくされています。
一方、経営セーフティ共済の場合は、40ヶ月拠出し続ければ掛金合計額の受給が保証されますので、返戻リスクを考えるのであれば、経営セーフティ共済の方が有利となります。
小規模企業共済は、その受給内容が共済金や準共済金の場合(受給事由を満たして入金がある場合)には、一括受取であれば『退職所得』として計算されます。もし、任意解約(受給事由によるものでなく自己都合による解約)の場合には、『一時所得』として計算されます。
『退職所得』は、拠出期間が長ければ長いほど共済金などから控除される金額が多くなるため、税金が安くなっていきますが、『一時所得』に該当する任意解約の場合には、拠出額や拠出期間に関係なく控除できる金額は50万円に固定されているため、税金は受給額が多ければ多いほど税金が高くなっていきます。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産といった事業に関係があるもののため、その入金は事業所得の総収入金額(法人の場合は益金)として計算されます。
事業所得は所得が大きいほど税率が高くなる超過累進税率の対象であるため、入金がある年に大きな費用等が無いと、多額の税金が課せられる可能性があります。
例えば、法人で加入するのであれば、従業員の退職に伴って経営セーフティ共済を解約すれば、損金となる退職金と益金となる解約返戻金である程度相殺することができますが、個人の場合には大きな費用を一時的に発生させるというのは、なかなか難しいのではないかと思われます。
そう考えると、入金時の税務上有利なのは、個人事業主の場合だと、小規模企業共済の方が有利といえます。
小規模企業共済も経営セーフティー共済も一見似ていますが、目的が異なることから、実は全く異なる処理になっていることがお気づきになられたのではないかと思います。
節税を考えるときには、入口(拠出時)だけでなく出口(受取時)も考慮しなければなりません。
そのため、どちらの制度も一長一短はありますが、
・法人の節税目的であれば、個人との所得分散を目的としたとしても、まずは経営セーフティー共済
・個人事業主の節税目的なら、小規模企業共済
と個人的に思います。
※あくまで個人的意見になります。事業規模や家庭環境等に結果が変わってきますので、ご自身で慎重にお考えのうえ、ご判断いただきますようお願いいたします。