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資金体力をつけるためには、在庫残高が大きいときには注意しなければなりません。資金繰りへの影響が大きいからです。
ある年の在庫が例年より多かったとしても、損益には直接影響がありません。
詳しくは後述しますが、在庫が増えたからといっても利益を圧迫することはなく、売上拡大を目指すのであれば、むしろ色々な商品を購入して在庫を増やしていった方が、品切れのリスク等がなくなるため、経営成績は良くなっていきます。
ただし、その分会社内部の資金がなくなり、運転資金も増えてしまいます。結果として、資金繰りに多大な影響を与えます。
ここでは、在庫が増えることによって、具体的に会社にどのような影響が出てくるのかを詳しくご説明いたします。
・在庫が増えるときはどんなとき?
・在庫に係る資金の動きと利益の関係
・在庫が増えるとどうなるのか?
・在庫コスト
・在庫が増えてしまった場合には
・在庫を増やさないためには
・当事務所の取り組み
経営をしていくなかで、在庫が増えてしまうときは、大きく三つあります。
一つ目は、開業当初です。
開業当初は、品数を豊富にそろえてお客様を待ちますが、まだ周囲からの認知度が足りないため売上にはうまく結びついてきません。そのため、必要最低限の仕入数であったとしても、在庫として残ってしまうのです。
二つ目は、会社の成長期です。
商取引では、必ず売上よりも仕入が先行します。成長期にある会社では、もっと売上を増やして儲けようとするため、在庫を多くしようとします。品数を増やすことにより、品切れさえ起こさなければ売上が必ず伸びていくためです。
また、売上が好調のときは店舗を増やしたりして規模拡大を図るため、新しい店舗のための在庫も必要になってきます。こうして、飛躍的に在庫数が増加していくことになります。
三つ目は、成長期後の停滞期初期です。
停滞期に入った段階では、成長期の余韻があるため、売上げが下落してきても挽回を図ろうとして、営業会議などで新商品を打ち出して、毎回新しい商品を揃えようとします。新しい商品は、基本的に売上に貢献するため、その分利益も増えます。
ですが、停滞期に入っているため、成長期のときのように仕入れても販売数が追い付かずに、在庫として売れ残りが増えて行ってしまうのです。
突然ですが、ここで一つ例を出します。
ある1年間において、次のような取引が行われたとします。前提として仕入と売上ともに現金取引と仮定します。
仕入れた商品 1,000個(仕入価格:@100円)
売れた商品 800個(販売価格:@110円)
この場合、商品の仕入価格は1個100円のものを1,000個購入したので、100,000円(=@100円×1,000個)の支払があり、この商品が800個売れたので、販売価格が1個110円のため、88,000円(=@110円×800個)の入金となります。
資金の動きだけを見てみると、この1年間での収支は12,000円(=収入88,000円-支出100,000円)の支出となります。
ですが、財務諸表の一つである損益計算書では、8,000円の利益となります。
損益計算を行う上で、商品に関する費用(売上原価)となるのは、実際に売り上げた商品の数に対する仕入価格だけです。そのため、例だと売れた個数が800個であり、商品1個あたりの利益は10円(=販売価格110円-仕入価格100円)なので、10円×800個で8,000円の利益が計上されることになります。
そのため、キャッシュフロー上は12,000円のマイナスであっても、損益計算書上ではプラス8,000円になるのです。
次に在庫の個数に着目してみます。
上の例の場合には、仕入れた個数が1,000個あって売れた個数が800個あるので、会社に在庫として残っている個数は200個です。
仮に仕入れた個数が10,000個で、売れた個数が800個の場合はどうでしょうか?
今回は仕入れた個数が10,000個もあるため、在庫が9,200個(=10,000個-800個)も残ってしまいますが、利益を計算するときは販売数のみカウントするため、同じようにプラス8,000円が計上されます。
在庫が200個残っているときの利益と同じ金額が、損益計算書上で計上されるのです。このように、利益を計算するうえでは、在庫の個数がいくらあっても影響しないので
在庫が増えてしまったとしても、利益が減ることはありません。
また、キャッシュフロー上では、1,000個仕入れたときは12,000円のマイナスですが、10,000個仕入れたときには912,000円のマイナスになります。
キャッシュフローがマイナスとなっているのは、別の見方をすれば、現金が商品に形を変えたと見ることができます。
現金が形を変えた商品は、販売することにより付加価値分(粗利益)が上乗せされて会社に還元されてきますが、販売しないと現金化することが出来ません。販売したとしても現在の商取引は掛取引がメインであるため、販売した時点で、その商品の販売価格は債権である売掛金に形を変えてしまうので、決済日を向かえて、やっと現金預金として手元に戻ってきます。
棚卸資産である商品は、現金化されるのにそれなりに時間がかかってしまいます。
それゆえ、在庫が増えると、その分だけ現金化するまでの時間が長くなってしまうため、その期間に対応する運転資金の金額も多くなっていきます。
このように、在庫が増えるということは、損益計算上には現れませんが、徐々に徐々に会社の資金を圧迫していくのです。
在庫を抱えると、当然コストもかかります。
一定数の在庫であれば、本来の営業上の管理費として考えることが出来ますが、季節商品の売れ残りであったり、不良在庫となってしまった商品に係るコストは、無駄なコストであり、これらは金食い虫以外の何ものでもありません。
その在庫を維持管理していくためのコストです。
在庫を置くための倉庫費用であったり、他社に管理を任せていれば管理料、また出荷等々の業務も委託しているのであれば委託手数料などもかかっていきます。
成長期の会社では在庫の数が増加傾向にあるため、新たに倉庫を借りる必要も出てきて、在庫数に比例してコストも大きくなっていきます。
また、金利の面からも考えることができます。
商品は現金が形を変えたものであるため、在庫が多いということは、それだけ会社に滞留している現金が多いということです。
経営していくうえで、金融機関から運転資金の融資を受けている会社は多いと思います。ということは、会社が仕入れた商品の購入代金は、その融資金額から捻出されたものとも考えることが出来ます。
そのため、在庫を多く持つということは、金利コストも比例して大きくなっているということです。
在庫が増えてしまった場合は、その在庫を減らさなければ資金繰りは一向に改善しません。
そのため、何かしら対策を練る必要があります。
在庫は現金が棚卸資産に形を変えているだけなので、在庫があるということは会社のお金の流れが滞留していることを意味していて、コストもかかりますし、運転資金にも影響します。資金繰りも悪化していきます。
そのため、販売価格を下げてでも会社から早い段階で手放しましょう。
そうすると、いままでかかっていたコストのお金も他に回すことが出来て、会社内部のお金の流れが良くなり、資金繰りも改善してきます。
セール品にしても売れ残ってしまうものは処分するしかありません。
なぜなら、持っていてもコストばかりかかってしまうためです。
処分するタイミングには、気を付けてください。
処分すると、その棚卸資産は廃棄損として費用計上されます。費用計上されるのであれば、利益が出ている事業年度に廃棄すれば、その費用に税率を乗じた分の税金を安くすることができますので、廃棄損を出すときには、会社の試算表を見ながら検討しましょう。
但し、そのタイミングを待っている期間にもコストは発生しているので、状況を見て判断してください。
在庫を増やさないためには、在庫管理表を付けるのが一番です。
当たり前じゃないか...と言われそうですが、正直言ってそれしかありません。
でも、やみくもに商品名と数量と単価を付けるだけでなく、その商品の付加価値である粗利益の表示もしてください。そうすると、どれがコスパよく売上に貢献する商品で、どれがコスパの悪い商品なのかを視覚的に分析することもできますし、今後の経営方針の材料にもなります。
また、財務指標である「棚卸資産回転日数」を使うこともお勧めします。
こちらは、「財務指標④ 現金循環日数」で紹介してますが、現金が商品として滞留している日数を計算することができる指標です。
日数が長くなっているということは、それだけ商品の在庫が多くなっているということになるので、在庫数を客観的に把握することが可能です。
四半期ごとでもいいですし、毎月末でもいいですし、試算表を固めた段階でこの指標を使えば、在庫が増えすぎていると異常値となって表れてくるため、期中に確認することができます。
その結果、もし異常値となっている場合には、在庫管理表を見直せばいいのです。
当事務所では、税務相談や税務申告のほかに、資金繰りや資金調達、経営分析に力を入れております。
在庫管理をするときには、上記で解説している『棚卸回転日数』や『現金循環日数』などを中心として分析することにより、資金体力のある会社づくりに努めております。
最近、在庫が多くなってきて資金繰りが悪化してきた、在庫管理が難しくなってきたなどでお困りの方は、ぜひ当事務所にお問合せください。