【資金調達】借入金のバランス

 『借入による経営効果』のページでは、金融機関から借入をすることによって、会社の成長スピードが飛躍的に上がることをご紹介しました。

 借入金には、その返済までの期間によって『短期借入金』と『長期借入金』に区別されますが、借入をしたときには、両者はどのくらいのバランスが適切なのでしょうか?

 融資の申請前に適切なバランスを知っておくことで、資金調達を効率的に行いやすくなります。

 また、ご自身で用意した自己資金とのバランスも気になるところです。

 ここでは、金融機関から借入をするにあたって、会社の全資金に占める借入金のバランスが、どのくらいが適切なのかをご紹介いたします。


 ・短期借入金の怖さ
 ・短期と長期の借入金のバランス
 ・自己資金と借入金のバランス
 ・当事務所の取り組み

 

◆短期借入金の怖さ

短期借入金の図

 『短期借入金』とは、借入をしてから1年以内に返済期限が到来する、貸借対照表上の流動負債に計上される借入金です。

 返済期限が1年以内であるため、金融機関側のリスクもそこまで高くないことから、金利も低く(金利は借入期間が長ければ長いほど高くなります。)融資審査が通りやすいため、融資のハードルが低いです。

 また、短期借入金は設備資金よりも運転資金の不足分として利用されることが多く、金額もそこまで大きくありません。

 季節変動の影響がある事業の場合は、一時的に運転資金が不足することも多いため、一旦短期で借入をしておいて、売上が平常時または盛況時に返済することが多いです。

 それゆえ、運転資金には短期借入金が利用されやすくなっています。

 ただ、これは一般的な話です。 

 運転資金が不足するのは、なにも季節変動色が強い事業だけではありません。

 会社が成長しているときにも運転資金は不足します。成長期の運転資金であっても短期借入金により補填することがほとんどです。

 そうすると、成長期の会社は、売上が継続的に増加し続けているわけですから、運転資金も増加し続けています。借入返済時には借入を申し込んだときよりも運転資金が枯渇しているので、より多くの借入の申し込みを再度しなければなりません。成長過程では、この繰り返しになります。

 成長期で利益が継続的に出続けているうちはまだ良いのですが、運転資金の不足は成長期が止まった後でも、相当期間は続くので、そのような状況下では、会社の財務諸表も良い数値ではない場合が多く、理想通りの借入ができない可能性があります。

 その結果、短期で借りれたとしても、金額は少なく、高い金利となってしまうケースになりやすいのです。

 短期借入金のほうが、金融機関の融資審査も通りやすく金利も少ないので、運転資金はついつい短期で申し込んでしまいがちですが、返済のことを考えると、『常に短期で』というのは出来るだけやめましょう。

◆短期と長期のバランス

バランスのグラフ

 では、短期借入金と長期借入金は、どのくらいのバランスが最適なのでしょうか?

 結論から言うと、全て長期借入金の方がいいです。

 これは当然で、長期借入金の方が返済期日までが長いため、借り入れたお金を有効活用できる期間が長く会社の資金繰りが安定します。金利は高くなってしまいますが、支払利息には節税効果も見られるため、返済と金利の両方から見ても、長期借入金に軍配が上がります。

 唯一心配なのは、長期融資を何本か受けていて、同じ事業年度に複数の借入の返済期日が到来してしまうことです。その場合は、資金繰りが恐ろしく不安定になってしまいますが、これは事前に計画しておけば防ぐことができます。

 とは言ったものの、実際に借入金を全て長期にするのは難しいです。

 設備資金の借入しか受けていないならば全て長期となる可能性がありますが、そうでないのであれば、なかなかできるものではありません。

 中小企業の平均を見てみると、長期借入金は短期借入金の約2~3倍となっています。

 そのため、もしこの数値よりも低い倍数なのであれば、なるべく短期から長期にシフトするように試みてみましょう。

 先ほどの運転資金の申し込みでも、最初から短期申込みではなく、まず長期で申し込んでおいて、無理そうなのであれば仕方なく短期にする...というスタンスにしてください。地道に進めていくことで、長期借入金が占める割合が多くなっていき、自然と会社の資金繰りが安定していきます。

◆自己資金と借入金のバランス

バランスの計算

 最後は、自己資金と借入金のバランスです。

 金融機関から多く借入をすることが出来れば、会社の資金繰りも安定して、色々なビジネスにチャレンジすることが出来ます。

 何度も申し上げているとおり、借入を多くすればするほど会社の成長スピードを飛躍的に上げていくことが出来るからです。

 ですが、借入はいずれ返さなければいけないお金なので、借りすぎてしまうと、後々の会社の資金繰りを圧迫しかねません。

 『借入による設備投資の影響』にも書きましたが、借入で設備投資をすることは、想定通りの利益を生まなければ、返済すること自体が難しくなってしまいます。

 このように、借入は一時的に大きな資金を手に入れることが出来る代わりに、決められた期日に必ず返済しなければならないため、両刃の刃なのです。では、自己資金と借入金の最適なバランスはどのくらいでしょうか?

 ここでは、資金調達を行う上での財務指標の一つである『ギアリング比率』を使うのが一番効果的です。

 「ギアリング比率」については、『財務指標② 長期的安全性の分析』で紹介していますが、会社が受けた借入に対する返済余力を確認することができる財務指標です。

 借入を検討しているときに、どの程度融資が実行されるかを事前に把握することも出来ますが、今現在の自社の返済余力を確認したいときにも使うことができます。

 ギアリング比率を用いると、借入金は自己資金の大体3倍~4倍までにとどめておくのが理想です。

 業種にもよりますが、標準水準が約3倍であるため、会社の成長スピードを重視したとしても+1倍の4倍がいいところではないかと思います。

◆当事務所の取り組み

 当事務所では、税務相談や税務申告のほかに、資金繰りや資金調達、経営分析に力を入れております。

 金融機関は、決算書や試算表から、会社の実績を見て融資を実行するか否か判断しますが、そのアピールの仕方にはコツがあります。コツといっても粉飾をするわけではなく、見せ方によって金融機関の印象が変わるのです。

 積極的に金融機関から借入を行いたい、または行う予定のある経営者の方は、一度ご相談ください。

 また、創業融資にも力を入れているため、創業をお考えの方も、お気軽にご相談ください。

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