これでわかる!自己資金完全ガイド

 創業融資の申請や、追加で融資を受けたいときなどに一番重要な項目が、この『自己資金』です。

 とくに、「創業計画書の作成ポイント(数字編)」にある「7.必要な資金と調達方法」では、希望融資額を決定する基礎金額でもあります。

 自己資金とは、その字の通り「自分(自己)の資金」という意味なのですが、その『自己』という部分について色々と制約があります。

 その制約について、ご紹介していきます。


 ・自己資金とは
 
・自己資金になるもの・ならないもの
 
・自己資金要件
 
・自己資金がない又は少ない場合の創業融資の申請
 
・自己資金が足りないとき

 

◆自己資金とは

 自己資金とは、ご自身の持っているお金のことを指しますが、これだけではありません。

 自己資金とは、『自分でコツコツと貯めたお金のうち事業用に使う資金、又は換金性のある物で、客観的に証明できるもの』に限られます。

 コツコツと貯めることができる人は、返済もきちんとできる人だと金融機関は見ています

 また、事業を行うにあたって入念に準備してきたことの証明にもなり、その覚悟や情熱の度合いをはかることも出来るため、自己資金は融資の審査のうえでとても重要な役割を担っています。

◆自己資金になるもの・ならないもの

  自己資金として、認められるものと認められないもののうち代表的なものをご紹介いたします。

◇自己資金になるもの

①預貯金

 審査では、申請時点から半年~1年前までの通帳の提示が求められます。

 個人事業ならその事業資金を貯めてきた通帳、会社なら、資本金のために貯めていた個人の通帳と会社の通帳です

 ご自身でコツコツと貯めてきているかの確認のためですので、給与などが振り込まれていた通帳が一番良いです。


②配偶者の預貯金

 自己資金が足りない場合には配偶者の預貯金も認められます。

 審査にて提示を求められますので、事前に伝えておくといいでしょう。
 

③株式や投資信託などの有価証券

 換金性があるものですので認められます。申請の際には証券会社からの取引通知書や投資報告書を提示しましょう。

 信用保証協会の自己資金算定の際には、保証協会が定める評価率を乗じた金額が自己資金として認められます。
 

 ※元本割れのリスクがあるため預貯金よりは印象は落ちてしまいます。


④解約返戻金

 貯蓄性のある生命保険や、お子様の学資保険の解約返戻金も自己資金として認められます。

 申請の際には、保険会社に問い合わせて、解約返戻金の証明書等を発行してもらいましょう。

◇自己資金にならないもの

①通帳以外の現金

 タンス預金などの現金は、その出所が不明のため自己資金として認められません。


②急な入金

 急な入金は見せ金(自己資金を大きく見せようと一時的に現金を通帳に乗せること)の可能性もあるため、認めれません。ただし、次のものは認めれています。
 
 ・退職金:源泉徴収票があれば認められます。
 ・資産の売却代金:売買契約書や領収書があれば認められます。


③返済義務があるもの

 借りたお金などは返済義務があるため、当然自己資金とは認められません。

◆自己資金要件

 「新創業融資VS制度融資」のページでもご紹介したとおり、『自己資金要件』とは、用意できる自己資金の金額によって融資を申請できるか否かが決まってくる要件です。

 言い換えれば、自己資金の金額に応じて、融資の希望できる額の範囲が決まってくる要件です。

 「日本政策金融公庫は自己資金要件があるが、信用保証協会には自己資金要件がない」と記載しましたが、正確には「日本政策金融公庫は自己資金要件が明示されているが、信用保証協会には明示されていない」です。

 日本政策金融公庫の新創業融資の『ご利用いただける方』では、

 『新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方』

 と記載されていて、例えば100万円の自己資金があれば、融資は900万円まで希望することができます。(※)

 一方、信用保証協会では上記のような対象者の欄に記載はありませんが、『融資限度額』にて

 『3,500万円(事業開始前(個人なら1ヶ月以内、法人なら2ヶ月以内)に申請の方は、自己資金に2,000万円を加えた額の範囲内とする』

 と記載があり、自己資金100万円の場合には、融資は2,100万円まで希望することができます。もし自己資金が0円ならば、融資は2,000万円まで希望出来ます。

 ただ注意して頂きたいのが、これらは全て限度額のことを言っているだけで、融資の実行可否に関しては明記していません。即ち「自己資金が少なくても実行しますよ」とは言っていません。自己資金は、最低限はある程度持っていないと融資は実行されにくいのです。

 
 以上のことから、自己資金はあればあるほど、新創業融資でも制度融資でも融資限度額が上がっていき、審査にもプラスに働くため、申請の際には自己資金は多いほうが良いことがわかります


(※)新創業融資の対象者で、『創業資金総額の10分の1以上の自己資金があればよい』となっていますが、限度額いっぱいの融資(自己資金の9倍の融資申請)は実際は難しいと思います。

 この要件は改定されたものですが、個人的には改定前の『創業資金総額の3分の1以上の自己資金があればよい』に照らした融資額(自己資金の2倍の融資申請)の方が現実味があると思います。

◆自己資金がない又は少ない場合の創業融資の申請

 自己資金は、新創業融資でも制度融資でも、その融資限度額や審査に影響があると言いました。ではどのような影響が出てくるのでしょうか。

■金利が高くなりやすい

 自己資金がない又は少ないということは、いざというときの返済の原資が無いということです。そのため、金融機関からは信用力に欠けると見られるため、金利が高くなりやすくなります。

■融資金額が少なくなる

 信用力が低く見られているため、当然その融資の金額は少なくなります。返済期間も短くなるケースもあるようです

■審査が通りにくい

 そもそも審査が通るのか...という問題があります。

 自己資金要件にある代替要件などを満たしていて、事業計画もきっちりと作られていれば審査がとおる可能性はあります。

 しかし、事業計画が短絡的であったりすると、信用力が低い状態では審査の担保もない状態なので、審査を通るのがとても難しいと思います。

 もし、弊所にご相談に来られても「融資を受けるのは難しい」と言わざるを得ません。

◆自己資金足りないとき

 自己資金がなかったり少なかったりすると、その審査に影響が出てきます。

 そこで、自己資金が足りない場合における代表的な対処法をご紹介いたします。

■自己資金が増えるまで待つ

 まずは自己資金をコツコツ貯めていきましょう。コツコツと貯めたお金は、間違いなく自己資金となります。

■事業計画を変更する

 現在の自己資金をベースとして、事業用資金の総額を変更しましょう。

 この場合は、融資額が減少するため事業資金総額が減少します。業種に依りますが、設備資金を抑えることは難しいと思うので、なんとか運転資金の圧縮を図ってみましょう。

■贈与してもらう

 ご両親やご友人、ご親戚に事業用資金の贈与をしてもらいましょう。自己資金と認められます

 贈与を自己資金と認めてもらう場合には「客観的に証明できるもの」が必要なため、
 
 ① 贈与契約書の作成をする
 ② 贈与者からご自身の預金口座に、贈与者名義で振り込む
 
 をしましょう。

 この方法は、自己資金がある場合のプラスαのようなもので、そもそも自己資金がない状態ではプラスにならず、自己資金ゼロと見られる可能性が高いです。

 ※ご両親の場合は、贈与契約書が不要な場合もありますが、そうなると金融機関側で入金元がわからず自己資金と認めてくれない可能性もあるため、②はしてもらいましょう。

■みなし自己資金を活用する

 みなし自己資金とは、『創業前に事業用に使用した資金を、自己資金として認めてもらう』方法です。

 自己資金は、申請の時点で、現預金のほかに客観的に証明可能な換金性のあるものに限られますが、事業を始めるための準備段階で支出した資金も、証明が可能であれば一部自己資金として認めれられています。

 おおむね設備資金は認められやすいですが、運転資金はその用途が不明な場合が多いため、認められることが難しいです。
 

<設備資金で認められる代表例>

 ① 器具及び備品
 ② 機械装置
 ③ 店舗や事務所の内装費用
 ④ 店舗や事務所の敷金・保証金

<運転資金で認められる代表例>
 ① 会社の設立費用(登記費用や定款認証料など。信用保証協会のみ)


 みなし自己資金として申請する場合には、その出金が通帳で確認出来て、領収書や契約書があることが条件となります。

◆当事務所の取り組み

 創業融資には『自己資金』がつきものですが、『自己資金』の考え方にはクセがあるために、理解するには少し時間がかかります。

 当事務所では、ご依頼者の『自己資金』を正確に算定したうえで、無理のない創業計画書の作成のサポートをしています。そのほか、融資面談のノウハウもご提供させていただきます。 

 また、金融機関の申請にあたっては、当事務所から直接ご連絡いたしますので、税理士が監修していることをアピールすることもできます。

 創業時は思った以上にやることが多く、融資実行まで身動きがとれないような状態では多くの機会損失を生み出しかねませんので、ぜひ都道府県の制度融資を申請されることをお勧めいたします。

 創業融資をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

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