創業計画書の作成のポイント
(文章編)

 創業者はまだ実績がなく、唯一あるものとすれば事業計画の見通しくらいです。

 そのため、創業計画書は融資の審査をするうえで、とても重要な判断材料になります。

 創業計画書は、ただ単に埋めていけばばよいというものではなく、融資担当者を納得させて、そのうえで融資を実行させるような内容に仕上げなければなりません

 融資の申請を失敗してしまうと、正式に公表されてはいませんが、おおむね半年以上経っていないと申請を受け付けてくれません。ということは、創業のタイミングが、どんなに早くとも半年以上先になってしまうということです。

 創業計画書の内容によって、その後が決まるといっても過言ではありません。

 でも、安心してください。

 この創業計画書の作成にはコツがあります。
 即ち、融資を勝ち取るために抑えるべきポイントがあるということです。

 このページでは、創業計画書で文章を記入する項目ごとに、そのポイントをご紹介いたします。

 また、日本政策金融公庫と信用保証協会(ここでは東京都とします)の創業計画書は、それぞれフォーマットは異なりますが、記入する内容はほぼ同じになるため、ここでは日本政策金融公庫の新創業融資の創業計画書を例としてご紹介していきます。


 1.創業の動機
 2.経営者の略歴等
 3.取扱商品・サービス
 4.取引先・取引関係等
 9.自由記述欄

 

◆1.創業の動機

 ただ単に創業のきっかけだけを書くのではなく、創業者の方が

 「どれだけ強い思いで創業をするに至ったのか」
 「どのくらいこの事業にかけているのか」
 「事業を継続していくうえで目標は何なのか」

 を記入してきます。

 この項目こそ、”創業融資のポイント”で挙げている「事業に対する熱意」を表現する場所です

 この項目は面談の際に聞かれる項目でもあるため、面談対策の一環として入念に準備しておいてください。

◇ポイント

① 創業に至った経緯を積極的にアピールしてください。

 ほかのページでも書いていますが、創業に対する熱意を持っているか否かで、その事業に対する本気度の伝わり方が全然違います。

 熱意を持っている、即ち信念を持っているということは、もしその事業に不測の事態が生じたとしても、心が折れてしまったりコロコロと事業の方針を変えてしまうことがなく、その信念のもと事業回復のために全力を尽くし、いざという時の底力を持っていることの証明にもなります。

 できれば、計画書の記入前に一度箇条書きでその思いを書いてみましょう。 

 あたりまえですが、「社内の人間関係がいやになって...」とか「安い仕入先が見つかったから」のような消極的な理由では、もちろんだめです。

 例えば、

「環境にいいこの材質を使えば、赤ちゃんのいる家庭でも安心して使える。なのに認知度はまだ低く、世間になかなか出回っていない。いまの勤め先は古風なところでチャレンジできる機会がなく、この材質の良さをアピールできる場所がない。この材質のことならば誰よりも知識を持っている自分が、世間に広めるために...」
 
 のように、創業に対して前向きに行動するような内容だと、担当者としても協力したくなるはずです。

② 事前調査など、入念な準備を行ってきたことをアピールしてください。

 事前に準備しているということは、それだけこれから行う事業に対して積極的に向き合っているということです、

 そのため、余すことなく、その内容について記入してください。

 例えば、「この材質はどこの産地のものが一番いい」とか「この材質の認知度はどのくらいあるのか」「材質を使用したことによる家庭環境への影響」など、実際の業務の流れのなかで、必要な情報を収集していることなど効果的です。

③ 第三者にも正確に自分の思いが伝わるようにしてください。

 熱い思いがあればあるほど、いきなり文章にしてみると、うまくまとまらないものです。

 ①にて箇条書きにしたあと、似ている内容のものなどを組み合わせたりして、文章を作ってみましょう

 うまく記入できない場合には、その熱意を次のような流れに当てはめてみてから、記入してはいかがでしょうか。(かなり抽象的ですので、実際はもっと具体的に記入してください)

 創業のきっかけ:業務中に改善点があることに気づいたが、勤務時代にはその権限がない
  ↓
 事業の検討:改善点について現実的に可能かどうか調査すると、実現できることがわかった
  ↓
 創業の決断:その後検討を進めた結果とくに不安要素もないため、より良いものを提供するために開業を決断した

◆2.経営者の略歴等

 日本政策金融公庫でも保証協会でも、過去に同業種または類似業種の事業経験があるかどうかは、融資審査においてとても重視されています。

 新規事業に臨むよりも、経験のある事業を営むほうがその事業の習慣や動向を把握しやすいため、融資を行う立場から見ると、廃業の確率が低く返済が滞りにくいと判断するからです。

 この欄では、正社員に限らず、アルバイトやパートの経験であっても記入してください。

 同業種であるだけで有利になります。

 一方、”過去の事業経験”の箇所は同業種でなくとも経験があれば記載してください。

 経営者であった経験はとても貴重で、審査を行ううえでかなりのアドバンテージになります。

◇ポイント

同業種・類似業種は最高のアピールポイント

 重要なことなので何度も言いますが、同業種や類似業種であることは、それだけでかなりのアドバンテージを得ることができます!そのため、漏れなく記載してください。

 例えば、いま30代でうどん屋の創業を考えているとします。
 20代の正社員のころはSEをしていて、学生時代は某有名蕎麦チェーン店でバイトしていた場合でも、飲食繋がりでそのアルバイト経験を書いてください。

② 何をしてきたのか具体的にアピールしてください。

 ただ単に、勤め先と雇用形態と勤続年数を書いただけでは、まだまだ不十分です。

 勤務時代に、そこで「何をしてきたのか」「どんな技術や知識を習得してきたのか」などを具体的に記入しましょう。

 とくにその経験が、これから行う事業に対してどのようにアドバンテージとなるのかを重視して、文章を作ってみてください。

 「仕事上壁にぶつかったけども、それを乗り越えた経験がある」などがあると、対応力があると見てくれるため、とてもプラスに働きます。

③ 積極的に別紙を使いましょう

 どの項目にも言えるのですが、行数が少ないです。

 具体的に書こうとすればするほど、あっという間に枠を使い切ってしまいます。

 そのときは無理に省略しようとせずに別紙を使ってください。

 別紙を使うことによって、担当者に言葉だけでなく、文字として伝えることもできます。

 この項目も、面談でよく聞かれる項目の一つですので、文字として残すことで何回も見直すことができ、面談対策にもなります。

④ 同業種や類似業種でなくても、強引に結び付けましょう

 別の業種であったとしても、その仕事内容などを振り返ってみて、新規事業と強引にでも結び付けてください。何もないよりはプラスに働きます。

 ただ、そのことについて面談では必ず聞いてきますので、その対策はしておきましょう。

◆3.取扱商品・サービス

■取扱商品・サービス内容

 現在決まっている商品やサービスを記入してください。

 売上シェアは見込みで構いませんが、その後記入する「7.必要な資金と調達方法」や「8.事業の見通し(月平均)」の作成に影響が出てくるため、よく検討してから記入しましょう。

 特に単価の設定には注意してください。

◇ポイント

 申請時に、メニューやカタログがあれば一緒に提示してください。事前の準備が行われている証拠となるため、アピールポイントになります。

 もしサービス内容が複雑な場合には、事業のパンフレットなどの提示が必要になってきます。必須ではありませんが、担当者が上司や審査員に説明するときに間違いのないようにするためです。

■セールスポイント

 事業を行うにあたってのセールスポイントを記入してください。

 セールスポイントの醍醐味は、なんといっても「差別化」です。

 どこにでもあるような内容では、お客様を呼ぶことはとても困難です。
 事業として成り立たせるには、「差別化」は必須事項です。

 

 もう一つあります。それは「説得力」です。

 事業を行ううえでは関係ありませんが、融資担当者を「なるほど」と言わせるような説得力が必要です。それも言葉ではなく、文字で起こすことが重要です。

 融資の審査を行うのは一人ではなく、色々な人の手に渡りながら融資の実行可否を決めるため、文字であることがとても重要になります。

◇ポイント

① 差別化のポイントは「少し」の違いです。

 金融機関では、今までにないような事業形態よりも、一般的な事業形態のほうが好まれる傾向があります。

 これは、審査を行う上で、その事業の収支予測がしやすいという理由のようです。

 そのため、差別化を表現するときに、無理に奇抜なアイデアを出す必要はなくて、少しだけ他との違いを出すだけでも評価の対象になります。

 実現性が高く、そのまま売上に直結できるような内容であると、申し分ありません

② 説得力は差別化をベースにしてください。

 差別化と紐づける形が一番自然ではないかと思います。

 「差別化する→それにより集客できる→売上に繋がる」という業務フローを表現できることが望ましいです。

 別紙を用意して、業務フローの概要図も併せて提示すると、より信憑性が高まります。

 これらの「差別化」「説得力」ですが、例えば某焼肉店にあるような、このコロナ禍の中で対人接触を極力避けることができる「オーダーシステムの全自動化」などがそれに該当します。

 これは、コロナ収束後であっても全自動化による人件費などの「固定費の削減」が可能であることも、アピールできるポイントになります。

 固定費は売上に連動しない費用であり、必ず発生する費用です。利益を常に圧迫するため、極力少ないほうが事業を進めていくのに良いとされています。

■販売ターゲット・販売戦略

 ターゲットとしている顧客層や、それを獲得するうえでの宣伝方法を記入してください。たとえ上記で記入済みであったとしても、改めて記入しましょう。

 すでに別紙のパンフレットや事業概要図などで表現しているのであれば、別紙参照でも構いません。

 もし、まだこの部分が固まっていないのであれば空欄にはせず、まずは顧客層を絞り込むことから行ってみましょう。

 顧客層を絞ることができると、おのずとその顧客を振り向かせるためには何をすればよいのかが、思いついてきます。

◇ポイント

 販売戦略では、宣伝方法だけでなく、それによりどのような効果を生むのかまで記入してください。

 事業を続けるには売上をあげることが大前提であり、売上をあげるためには集客することが必要になります。集客をするためには、宣伝方法によってその効果が変わってきます。具体的にどのように集客できるかまでを明示できれば、融資担当者も安心して上司に説明できるはずです。

■競合・市場など企業を取り巻く状況

 最初からインターネットで指標やら調査報告などを調べてみてもいいのですが、いったん参考程度にとどめておきましょう。

 大手企業も対象としていたり、情報量がとにかく多いので消化しきれない可能性が高いです。

 おすすめの方法は、その業界にいる社長のブログなどをまず探してみましょう。

 何ヶ所か読み進めていくと、なんとなく今現在の市場の動きがわかってきます。

 そのうえで、もう一度指標や調査報告を見てみると、最初に見たころに比べて頭の中に入りやすくなっているはずです。

 また、創業前に一度現地に行ってみて町の雰囲気を味わうのもいいと思います。

 これは、実店舗型に限らずお勧めいたします。

 面談の際に、その地を選んだ理由や、もしかしたら雑談のネタにもなり人柄を見せるいい機会になるかもしれません。

◇ポイント

 ただ単に調査内容を記入するだけでなく、その状況を客観的にどのように思っているのかまで書きましょう。

 今後の見通しなども、引用でなくご自身の言葉で記入できると、「3.取扱商品・サービス」の項目全てについて一貫性が出てきます。  

◆4.取引先・取引関係等

 すでに決まっているところがあれば必ず記入してください。

 まだ決まっていなくとも、決まる可能性が高いのであれば注釈を入れたうえで記入しましょう。

 取引先との契約書や注文書があれば、忘れずに添付しましょう。

 この項目は、「7.必要な資金の調達方法」や「8.事業の見通し(月平均)」に関係してくるので、金額や入出金のタイミングに矛盾が起きないように注意してください。

◇ポイント

 すでに契約している取引先があったり、現在契約に向けて動いている取引先がある場合には、面談でその経緯なども併せてアピールしましょう。

 この項目は記入する内容が固定されているため、なかなかプラスαで記入することができません。その代わり面談では必ず聞かれる項目であるため、上手にアピールできるように準備しておきましょう。

◆9.自由記述欄

この部分は事由に記入できる項目ですので、よりアピールできることでもいいですし、何社も見てきている担当者にアドバイスを求めてもいいと思います。

 ただ、空欄にしておくのだけは絶対やめてください

 創業計画書のなかで、わざわざ自由に記入できる箇所を設けているのに、それを使用しないとなると印象は良くありません。

 公庫としても、申請者に申請を行ううえでの自由度をもたせるために設けている箇所でもありますので、何かは書くようにしましょう。

◇ポイント

 ここはポイントというかご提案です。

 ”2.経営者の略歴等”で他業種の経営の経験がある方は、この欄を使用してその経験を記入してはいかがでしょうか?

 アピールすれば当然に有利になる項目ですが、この他業種の経営経験を記入する欄がほかにないため、この欄を有効活用してもいいのではないかと思っています。

◆当事務所の取り組み

 創業計画書は、『ご自身の業務経験やこれからの事業内容を記入する”文章編”』と『これからの事業計画の具体的な数値を記入する”数字編”』に分けることが出来ます。

 弊所にご依頼いただいた場合には、融資を勝ち取るための創業計画書を作成し、融資面談の際のノウハウもご提供させていただきます。

 また、金融機関の申請にあたっては、当事務所から直接ご連絡いたしますので、税理士が監修していることをアピールすることもできます。

 創業時は思った以上にやることが多く、融資実行まで身動きがとれないような状態では多くの機会損失を生み出しかねません。

 創業融資をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

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