創業計画書の作成のポイント
(数字編)

 創業計画書の文章編に続き、次は数字編でのポイントのご紹介です。

 当初は1ページに収めようかと思ったのですが、数字編も含めると思ったよりも長くなってしまったので、ページを分けました。

 文章編は、事業に対する熱意やその姿勢(準備)の記入がメインでしたが、数字編では実際にこれから事業を行っていくうえで、創業者はどのような計画をもっているのかを記入します。

 計画性の良し悪しを見られます。

 いくら文章編で良い印象を得られたとしても、記入する数字の内容によっては、審査をとおるのが難しくなってしまうこともあるので、気を付けましょう!

 ※このページも文章編と同様に、日本政策金融公庫の新創業融資の創業計画書を例としてご紹介しています。


 7.必要な資金と調達方法
 8.事業の見通し(月平均)

◆7.必要な資金と調達方法

 創業計画書にあるこの表は、事業を始めるにあたって、必要な資金とその使い道を記入します。

 左側が「事業の設備に充てる資金とランニングコスト(運転資金)」で右側が「事業に使うための準備資金と調達資金」です。

 事業資金の使い道を示すため、左右は必ず同じ金額になります。

■設備資金

この欄では、事業を行う上で必要な「設備」のほか、「内装費用」や事務所などを借りたときの「保証金」「敷金」を記入します。

 注意すべきは、すでに購入してしまっている設備や、すでに支払っている内装費用であったり保証金・敷金は、融資の対象にはなりません。

 融資は、必要なものを購入等したいが現状ではお金が足りずに、その足りない部分を補うために借りるものだからです。

 そのため、設備資金の融資を受けたいのであれば、事前に購入等をしないようにしましょう。

 融資を受ける予定の設備資金については、必ずその設備の購入に係る「見積書」の提示が求められます。

 これは、事務所を借りたいときにも必要になりますので、仲介業者や家主の方に事情を説明したうえで、入居の際の「見積書」を出してもらうか「仮契約」を組むなどしておいてください。

■運転資金

 この欄では、仕入関係の費用であったり、事業を行っていくうえで生じる経費などを記入しますが、あまり細かいことは気にせずに、設備資金以外のものを記入する...くらいで構いません。

 記入する金額ですが、毎月の経費の大体3ヶ月程度が一応の目安と言われています。

 また、設備資金と違い、運転資金は日々の経費が中心になるため、見積書のようなものは特に必要ありません。

(代表的な経費の例)
・人件費 ・法定福利費 ・福利厚生費 ・外注費 ・消耗品費 ・事務所家賃 ・水道光熱費 など

 そのほか、会社の設立に要した費用(登記など)も対象になります。

 

 ※個人事業主の場合には、事業主の給料は経費になりませんのでご注意ください。(利益から充てることになります)

◇ポイント

 この表を作成していくと、左右の合計金額が一致しないことがあります。

 そのときには運転資金の金額で調整しましょう。
 
(調整する際には、金額に矛盾が生じないように、内訳の金額を修正しましょう)

■自己資金

 ご自身で準備してきた創業時の事業用資金です。

 新創業融資の場合には、融資の限度額を図るうえで重要な金額になります。

 制度融資では融資限度額に関係するような記載はありませんが、自己資金の算定式が厳格に決められている以上、重要視していることは間違いありません。

 融資申請の際には、その自己資金をどのように貯めたのか(見せ金はでないのか)確認のために、通帳原本の提示が求められますので、表に記入する金額までの履歴は必ず印字しておくようにしましょう。約1年分の提示が求められます。
(WEB通帳などの場合には、その時点までの履歴を印刷しておきましょう)

 この自己資金の要件については別のページで詳しく紹介しています。

◇ポイント

 新創業融資では、自己資金は創業資金総額の1/10以上、すなわち自己資金の9倍まで借りられるようになっています。

 ですが、これは最大限申請可能な金額であり、現実的にみれば、以前までの自己資金要件のように自己資金の2倍~3倍程度が妥当と思われます。

■親、兄弟、知人、友人等からの借入

 返済義務があるものについては自己資金と認めれないため、この欄に記入します。

◇ポイント

 贈与の場合は自己資金と認められますが、必ず贈与契約書を作成しておきましょう。(親の場合には、作成しなくとも自己資金の一部と認められることがあります)

■日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入

 今回申請する希望融資額を記入しましょう

■他の金融機関等からの借入

 現在借りている金額を記入します。

 日本政策金融公庫や信用保証協会は信用情報をとっているので、記入漏れのないようにしましょう。記入漏れがあると、管理が出来ていないと見られてしまい審査に影響があります

 また、リース契約は忘れがちなため、かならず確認しましょう。

◆8.事業の見通し(月平均)

 損益計算書の簡略版のようなものです。

 創業計画書にあるこの表では、返済金額の記入欄がありませんが、返済はこの利益(減価償却費がある場合には、それを加えた金額)から支払われることになるので、必ず月々の返済額以上の利益を出すように計画しましょう。

■売上高

 「3.取扱商品・サービス」に記入した価格をもとに算定しましょう。

 算定の仕方は、売上を構成する要素ごとに分割していき、その後掛け合わせる方法が一番妥当です。
 (例:飲食店の売上 「A.客単価」「B.回転数/日」「C.席数」をベースとして、2021年9月売上/月=A×B×C×営業日(30日-2日(日・月)×4週)」

■売上原価

 商品販売であれば、原価率を使用しましょう。商品ごとに異なるのであれば、「売上」を商品ごとに分割し、売上原価も同様に分割しましょう。
 (例:商品A:売上原価=売上高×原価率)

 サービスを提供するような業種であれば、仕入金額はないため記入はありませんが、外注費など売上に連動するような費用があれば、それを記入しましょう。
 (例:サービスA:外注単価×件数)

■人件費

 雇用形態ごとに金額を設定し、雇う人数も事前に検討しておきましょう。個人事業主の場合には、利益から生活費をまかなうため、記入しないように注意しましょう。

■家賃

 すでに契約しているなら賃貸契約書、これから契約予定であれば見積書か仮契約書に記載されている金額を記入しましょう。

■支払利息

 融資希望額をベースとして、定められている利率を用いて計算しましょう。
 (例:融資残高×利率÷12ヶ月)

 すでに事業用で別の借入をされているのであれば、その返済計画表に記載されている利息の金額も記入しましょう。

■その他

 上記に記載のない費用を記入します。

 リースなどがあれば、その金額も経費となりますので、漏れなく記入するようにしましょう。

■~根拠をご記入下さい

 この欄には、記入した金額の根拠の計算式を記入します。

 全項目について「創業当初」「1年後又は軌道に乗った後」両方とも記入しましょう。ただ、全てを記入するとなると、この欄では記入しきれないこともあるので、その場合には別紙を用意する方が良いです。

◇ポイント

① 利益は、あえて最初から出さないようにする

 一般的に、創業当初から利益が出ることはほとんどないので、あえて利益は出さない方が現実味があります。

 ただ、いつまでも利益が出ないようではビジネスとして成り立ちませんので、創業計画書には「1年後又は軌道に乗った時」には返済できるような利益を記入にしてください。

②「軌道に乗った時」の金額は、「創業当初」の〇〇倍...のようにしない

 実際に事業をしてみると、売上であれ経費であれ、どの時点の〇〇倍...となるようなことは、なかなかありません。

 日本政策金融公庫の記入例では”〇〇倍”であったり”〇回転→〇回転”のようにしていますが、これでは未来の計画について、具体的に考えなければならないことを放棄しているようなものです。

 現に、記入例のように創業計画書を作り上げて融資に臨まれたのに、審査に落ちている方もいらっしゃいます。

 これから人生をかけて臨む事業ですので、「文章編」でも記載したように、未来の計画をするときは出来るだけ具体性をもって検討して頂き、そのうえで想定される金額をもって記入をしましょう。

 創業計画書を作るためだけでなく、今後事業をするうえでの指標となるため、必ず役にたちます!

③ 個人事業主の場合の注意事項

 個人事業主の場合には利益から生活費をまかなうことから、利益の金額は「生活費+月々の返済額」以上としてください。

 生活費は、お住まいの地域にもよりますが約20万円~28万円ほどを見込んでいれば、面談のときに指摘されることはありません。

◆資金繰り表について

 弊所では、新創業融資でも制度融資でも、創業計画書のほかに弊所独自で用意している資金繰り表を添付して申請しています。

 日本政策金融公庫がHP上で公開している「月次収支計画書」や「資金繰り表」に比べて、より具体的にして、かつ補足説明も加えた資料です。

 この資金繰り表を添付することによって、創業計画書のフォーマットにある「7.必要な資金の調達方法」や「8.事業の見通し(月平均)」の補足資料としてより細かく内容を提示することができます。

 それが融資の担当者の信頼を得ることに繋がり、融資の審査を通りやすくしています。

 また、資金繰り表にも、その金額の作り方によって融資の審査を勝ち取るポイントがいくつかございます。創業計画書にある商品の単価などをベースとしながらも、その金額の動かし方や表現の仕方にコツがあるのです。

 弊所にご依頼の際には、事業内容について色々お話をうかがいながら、融資を勝ち取るための資金繰り表を作成いたします。

 法人・個人事業主問わず創業融資のサポートを行っておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

◆当事務所の取り組み

 創業計画書は、『ご自身の業務経験やこれからの事業内容を記入する”文章編”』と『これからの事業計画の具体的な数値を記入する”数字編”』に分けることが出来ます。

 弊所にご依頼いただいた場合には、融資を勝ち取るための創業計画書を作成し、融資面談の際のノウハウもご提供させていただきます。

 また、金融機関の申請にあたっては、当事務所から直接ご連絡いたしますので、税理士が監修していることをアピールすることもできます。

 創業時は思った以上にやることが多く、融資実行まで身動きがとれないような状態では多くの機会損失を生み出しかねません。

 創業融資をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

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