【資金調達】金融機関での自社の評価を
知ろう

 資金繰りを円滑に行うためには、利益体質になることも重要ですが、資金調達の手段である融資を受けることも必要です。

 効率的に資金調達することができれば、事業拡大のための先行投資もしやすくなり、事業計画の幅が拡がります。

 効率的に資金調達するためには、金融機関において、融資の申込があった場合に、どのような会社が融資されやすい会社で、どのような会社が融資されにくい会社なのかを知る必要があります。

 ここでは、金融機関が、どのような基準によって融資の決定を決めているのかご紹介します。

 
 ・金融機関では、どうやって会社を評価している?
 ・債務者区分と信用格付とは?
 ・格付けによる融資の可能性の違い
 ・格付けがもたらす融資額への影響
 ・まとめ
 ・当事務所の取り組み

 

◆金融機関では、どうやって会社を評価している?

目安の図

 金融機関が、融資を行うにあたって一番恐れているのは、その融資先が貸し倒れないかどうかです。

 そのため、融資を行うにあたっては、その会社又は個人事業主の財務状況や収益力、既存の融資があればその返済状況等を勘案して、融資をしても大丈夫なのか、貸し倒れのリスクはどの程度あるのかを考慮しつつ、融資額と返済期間を決めています。

 これらの判断基準は、以前は「金融検査マニュアル」というものでされていました。

 「金融検査マニュアル」は、バブル崩壊によって、金融機関の融資先が不良債権化してしまい、経営状況が悪化したことにより、再び不良債権を再発しないよう制定されましたが、時は経ち、この問題も落ち着いてきたことから2019年に廃止されています。

 廃止されているため、金融機関がこのマニュアルを使うことは義務化されておらず、どの金融機関も独自の判断基準を設けています。

 とはいえ、このマニュアルは、もともと”不良債権化の防止”を目的としているため、現在でも融資の実行可否を決める上では、その判断基準の出発点とされています。

 この判断基準の出発点となっているのが、格付けと言われている『債務者区分』と『信用格付』です。

 

◆債務者区分と信用格付とは?

目安の図

 融資の判断基準となっている『債務者区分』と『信用格付け』は、それぞれが別のものではなく、密接な繋がりがあります。

 『債務者区分』でまず融資先をグループ化し、そのグループ内の順位を『信用格付』で決めています。

◆債務者区分

 債務者区分とは、融資対象先を大きく5グループに区分したもので、「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」があります。

 「正常先」が金融機関からの評価が一番高く、「破綻先」に近づけば近づくほど評価が低くなっています。

 債務者区分の判定では、金融機関ごとに作成した独自のマニュアルに基づいて査定しています。査定には、会社の業績や財務状況、これまでの融資の返済状況などから、総合的に判断されます。

 

①正常先

 業績が良好で、財務内容に特段の問題もなく延滞もない融資先を指します。金融機関にとって、一番リスクの少ない融資先です。

②要注意先

 金利減免や棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、事業が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など、今後の管理に注意を要する融資先をいいます。

 要注意先に区分された融資先のうち、すでに3ヶ月以上延滞していたり、貸出条件の緩和先となっている融資先は、”要管理先”として、より管理が必要とされます。

③破綻懸念先

 経営破綻の状態ではないけども、経営難の状態にあり、実質債務超過であったり、返済が滞っているなど、回収について重大な懸念がある融資先をいいます。

④実質破綻先

 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っ ている融資先をいいます。

⑤破綻先

 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している融資先をいいます。具体的には、破産、清算、会社整理、会社更生、 民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている融資先をいいます。 

 

◆信用格付

 信用格付とは、上記の債権者区分を一部細分化したようなもので、12区分によって格付けしています。

 査定では、決算書との数値に基づいた財務指標や、経営者の能力であったり会社の技術力などの定性面により判断されます。

 これらの区分は債務者区分の詳細であり、債務者区分を大区分とすると、信用格付は中区分のイメージに近いです。そのため、返済が延滞しているなどで”要注意先”となっていれば、いくら決算書の数値がよかったとしても、”正常先”になることはありません。

 ① 正常先:1~6
 ② 要注意先:7~8
   要管理先:9
 ③ 破綻懸念先:10
 ④ 実質破綻先:11
 ⑤ 破綻先:12

 

◆格付けによる融資の可能性の違い

目安の図

 金融機関が融資の実行可否を検討するときには、各々で独自のマニュアルを用いていますが、ほとんどの場合は「債務者区分」と「信用格付」を出発点にしています。

 金融機関によって多少の誤差はありますが、概ね次の表のような方針に基づいて、融資を実行しています。

 

債務者区分 信用格付 融資に対する姿勢
①正常先

1~2

積極的に実行
  3~4 状況により実行
  5~6 現状維持
②-1要注意先 7 現状維持
  8 消極的
②-2要管理先 9 取引解消予定
③破綻懸念先 10 取引解消予定
④実質破綻先 11 取引解消予定
⑤破綻先 12 取引解消予定

 

◆積極的に実行

 正常先に区分されて、信用格付が1~2の融資先は、金融機関にとっては最優良のお客様です。融資の提案も積極的に行われて、融資量を増やすことを第一の目標とされています。

 この区分にマークされている融資先は、「プロバー融資の提案」や「低金利融資の提案」「保証人不要の融資の提案」などがなされます。

◆状況により実行

 正常先に区分されて、信用格付が3~4の融資先は、1~2の融資先ほどではないものの、基本的には融資量を増やしていくことを目標とされています。

 そのため、無理な融資提案はせずに、融資のタイミングや経済状況に照らして、条件が合致する場合には積極的に追加融資が行われる融資先です。

◆現状維持

 正常先に区分されていて信用格付が5~6か、又は要注意先に区分されていて信用格付が7にマークされている融資先が対象になります。

 ここの融資先には、現状維持が求められていて、追加で新たに融資をするというよりは、既存の融資を返済していくなかで空いた与信枠について、融資を再実行していくというスタンスがとられます。

 とはいえ、全く新規融資を行わないというわけではなく、状況によります。

◆消極的

 要注意先に区分されて、信用格付が8の融資先は、新規の融資は行わず、行ったとしても少額融資となる可能性がとても高いです。

 この区分に該当する融資先は、新たに融資を申請する場合には、経営改善計画書などを作成して改善努力をアピールしないと、満足な融資が得られない状況になってしまいます。

◆取引解消予定

 要管理先以下の区分とされている融資先は、いまある融資の返済を求めてきます。

 この区分とされている融資先は、既にリスケ中であることが多いです。そのため、金融機関としては、早くこの状況を改善したいために、貸し倒れを起こさせないために早期に回収することを目標にしています。

◆格付けがもたらす融資額への影響

目安の図

 金融機関は、債務者区分を始めとした格付によって、融資先に対する融資の積極度合いが異なることがわかりました。

 最後に、積極度合いによって、どの程度融資額に影響が出るのかお伝えいたします。

 あくまで一例ですので、全ての金融機関に当てはまるというわけではありませんが、近いものにはなっているはずです。
 

◆金融機関からみた融資検討

 金融機関が、既存の融資先に融資を行う場合には、まず過去3年分の融資残高を各月ごとに一覧表にします。大体どの金融機関も同じようなやり方をしています。

 そうすると、「どの時点で」「どのくらいの融資を実行して」「どのくらい返済しているか」を把握することができ、その会社の決算状況に基づいて実行した融資について、妥当だったのか、多すぎたのか、もっと融資できたのかが一目でわかります。

 この情報をもって、最新の格付け情報に照らし合わせて、融資の実行可否を検討していきます。 

◆格付けがもたらす影響

 この検討方法を、格付け情報に照らし合わせると、次のようになります。
 

・積極的に実行
 この区分とされている会社は、過去3年分の融資状況も良好であるため、過去の限度額を超える融資を積極的に金融機関は行おうとしてきます。

 例えば、過去3年間の各月の融資残高の最高額が3,000万円で、現在の融資残高が1,000万円だった場合を想定してみます。この場合は、融資の与信枠は2,000万円になっているため、もし限度額が変わらなければ2,000万円までしか融資を実行しませんが、この区分にいる会社に対しては、融資申請額を再度3,000万円申し込んだとしても、実行される可能性が非常に高いです。
 

・状況により実行
 この区分とされている会社は、過去3年分の融資状況も良好であるため、過去の限度額の範囲内であれば積極的に融資を行ってきます。限度額を超える融資を申し込んだ場合には、金利が高くなるなどの条件が付されるかもしれません。

 上記の例であれば、2,000万円までであれば問題なく融資は実行されますが、オーバーしている1,000万円については、少し不利な条件下での融資になるかもしれません。
 

・現状維持

 この区分とされている会社は、過去3年分の融資に問題はないため、過去の限度額の範囲内であれば、融資可能性が高いです。限度額を超える融資を申し込んだ場合には、超える部分については実行されないこともあります。

 上記の例であれば、2,000万円までならば融資が実行される可能性は高いですが、オーバーしている1,000万円については難しいと思われます。もともとプロパー融資であれば、1,000万円については、保証付融資となったり、又は融資されないかもしれません。

 

・消極的
 この区分とされている会社は、過去3年分の融資の返済に問題があるため、過去の限度額の範囲内でも融資は難しくなってきます。

 上記の例であれば、2,000万円の融資が実行されることはほとんどなく、減額される可能性が高いです。また、プロパー融資ではなく、保証付融資になると思われます。
 

・取引解消予定
 この区分とされている会社は、過去3年分の融資でリスケなどにより返済が滞っていることが多いです。そのため、過去3年間の融資額に関係なく、新規融資は難しいでしょう。

 

◆まとめ

 今回は、金融機関目線での融資について、ご紹介しました。

 読んでいただいてみてわかるとおり、融資を円滑に受けるためには、既存の融資があるのであれば返済は遅れないこと、決算書の数値を良くすること、の二つの条件が必須となってきます。

 ですが、決算書の数値が良くなかったとしても、その数値の根拠が、金融機関が納得するものであるならば、今後のお付き合いとして融資が実行されることもあります。

 一度、融資を受けている金融機関に、自社の評価を聞いてみるのもいいでしょう。(意外と教えてくれますよ)

 

◆当事務所の取り組み

 当事務所では、税務相談や税務申告のほかに、資金繰りや資金調達、経営分析に力を入れております。

 資金調達を行う際には、経営分析をベースとして、どの程度資金調達できるかを検討するとともに、出来る限り融資可能性を高めるためのサポートをいたします。

 また、資金計画を初めて実施される方は、資金繰り表の作成サポートもしております。

 資金調達をお考えの方、資金計画を実施してみたい方・再検討してみたい方など、資金体力のある会社づくりを目指したい方は、お気軽にご連絡ください。

 また、創業融資にも力を入れているため、創業をお考えの方も、お気軽にご相談ください。

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