帳簿は自社でつける?外注する?

 創業時に悩むものの一つとして、帳簿をどうするか、という問題があります。

 事業を行う上では、税金の申告というのは切っても切り離せないものですが、申告をするためには、白色申告であれ青色申告であれ、必ず記帳しなければなりません。(白色申告の場合は、簡易的な方法が認められています)

 そのため、

 ①日々の取引について、自社で記帳するのか外部委託するのか
 ②自社で記帳するならどの会計ソフトがいいのか

 という悩みが出てきます。

 ここでは、帳簿関連の第一弾として、『自社で記帳するのか外部委託するのか』について、税理士目線でお伝えします。


 ・自社で記帳する場合の特徴
 ・記帳を外部委託する場合の特徴
 ・自計化も外部委託も一長一短
 ・自計化か外部委託かは状況による
 ・当事務所の場合

 

◆自社で記帳する場合の特徴

 自社で記帳することを、業界では『自計化』といいます。

 自計化を推奨している税理士事務所は多いですが、それにはきちんと理由があります。

 

①会計ソフトの選択

 ますは会計ソフトの選択です。

 昔は会計ソフトを販売している会社は数社しかありませんでしたが、いまはクラウド会計を筆頭に、色々な会計ソフトがあります。どの会計ソフトにも、当然ですが、良いところも悪いところもあるため、十分に吟味しなければなりません。

 

②簿記の知識が必要

 帳簿を付けるためには、簿記の知識がないと出来ません。

 だからといって、なら資格を取らなければならないのか...というとそんなことはありません。

 創業当初であれば、そこまで取引量がなく、複雑な取引もないことが多いため、簿記に関する本を数冊程度読んでしっかりと勉強すれば、ある程度対応できると思います。

 決して、勉強せずに片手間で出来ると思ってはいけません。

 期中の処理を適当にやって、決算の際に税理士に依頼してみると、修正の量が膨大過ぎて追加料金が発生した、なんてこともあります。

 

③経理の方を雇うなら人件費増

 経理担当者を雇用すると、固定費が増加します。

 担当者に対して支払う給料のほかに、社会保険料もあれば、使用する会計ソフト代金、その保守料金など、もろもろで月に最低でも20万円ほどかかることになります。

 

④リアルタイムで自社の損益がわかる

 これまでのお話しだけだと、自計化するのはハードルが高そうに見えますが、ハードルが高いからにはそれ相応の見返りがあります。

 見返りの一つ目は、リアルタイムで自社の試算表が見れることです。試算表を見ることができれば、経営状態を知ることが出来るようになります。

 自社の経営状態を数値としてすぐ見れることは、経営判断を素早く行うことができ、これは何にも代えられない財産です。

 

⑤常に資金繰りの検討や分析が可能

 見返りの二つ目は、資金繰りの検討や財務分析を行いたいときに出来ることです。

 リアルタイムで自社の財務情報を見ることが出来るため、その情報をもって、早い段階で今後の設備投資や店舗拡大を検討したり、融資を受けるタイミングを図ったりすることができます。

 また、好きなタイミングで、現在の自社の状況を財務分析することも出来ます。

 

◆記帳を外部委託する場合の特徴

 税理士事務所は自計化を推奨している事務所が多いと述べましたが、推奨はしているけども、実際には自社で記帳している中小・零細企業はそこまで多くありません。

 一人で会社をやっている方や、従業員がほぼ営業であったりと、経理の方を雇うよりも、売上を伸ばそうとする考え方が強いからではないかと思います。

 

①外注委託先の選定

 記帳を外部に委託する場合には、委託先を選定しなければなりません。

 主な委託先は、記帳代行会社か税理士事務所になりますが、数が多すぎるため何を基準に選んでいいのかわかりません。

 会社や事務所によって、記帳の受託方法(記帳代行といいます)が異なり、そもそも記帳代行をしていないところもあれば、弊社のように領収書の内容を会社で一度エクセルにまとめてもらったうえで記帳代行していたり、領収書をそのまま送る(業界用語で、丸投げといいます)ことができるところもあります。

 記帳代行の料金も、その記帳代行内容やボリュームによってかなりの幅があります。

 そのため、選定の際には、事前にある程度の要望(丸投げであったり、エクセル集計はするなど)を持って、検索するほうがいいでしょう。

 

②財務情報が外部に出る

 自社の記帳を外部に委託しているため、どうしても外部に取引内容が出てしまいます。

 税理士は法律で守秘義務が定められていて、記帳代行会社も契約などで守秘義務を謳ってはいますが、自社から外に出てしまうことには変わりありません。

 外部委託する場合には、その部分も考慮しておく必要があります。

 

③自社の損益などの情報が遅れる

 外部に記帳を委託すると、試算表を見るタイミングが、大体約2ヶ月後くらいになります。

 これは、記帳するのが外部であるため、会社に取引内容の質問したり、過不足の資料を催促したりするため、どうしてもその分時間がかかってしまうのです。

 特に気にしない場合にはデメリットとは言えませんが、早く見たいという方は外部委託はお勧めできません。

 また、取引の内容によっては頻繁に質問することもあるため、いちいち回答しなければならない(自分の時間を削らなければならない)煩わしさは出てきます。

 

④社員を雇用するのに比べて固定費が少ない

 外部に委託すると、その記帳のボリュームにもよりますが、月に20万円の支払になることは滅多にありません。月に20万円支払うとなると、そこには記帳以外の料金、例えば、税理士であれば税務相談料であったり、記帳代行会社であればコンサル料なども含まれているはずです。

 そのため、資金だけに着目するのであれば、自社で雇用するよりは、外部に委託する方が資金面は楽になります。

⑤消費税の節税になる

 自社の経理担当に払う給与は消費税の対象にはなりませんが、外部に委託する場合には外注費となり、サービスを受けた対価を支払うため、消費税の対象になります。

 そのため、外注費に係る消費税は、計算の過程で控除することが出来るため、消費税の節税になります。

 

◆自計化も外部委託も一長一短

 下記のとおり、自計化も外注も、一長一短であるのがよくわかります。

記帳方法 会計ソフト 簿記の知識 費用 試算表 経営分析
自計化 必要 必要 約20万円/月~
(正社員を前提)
リアルタイム リアルタイム
外部委託 不要 不要
(試算表を見るためには必要)
約1万円/月~
(仕訳数による)
約2ヶ月後 約2ヶ月後以降

 

◆自計化か外部委託かは状況による

 どちらも一長一短であるため、「絶対にこっちがいい!」というのは難しいですが、あくまで私個人としての意見を言うと…。

 

①お勧めは自計化

 リアルタイムで試算表が見れることは、やはりとても貴重です。

 事業をしていくなかで、思ったより利益が出なかったり資金が貯まらなかったりしたときに、最新の試算表を見ることにより対策を立てやすくなります。

 なによりも、外部で記帳するよりも、自社で記帳したほうが帳簿の精度が高まります。

 記帳するためには、その取引の内容や資金の動きを正確に知っている必要があるため、自社であれば特に問題はありませんが、外部に委託すると、どうしても認識相違する部分が出てきてしまいます。

 また、委託先から質問等が頻繁に来ることもあり、回答が遅れてしまうと、その分試算表が出来上がる時期が遅くなっていき、出来上がったころには4ヶ月以上前の情報だった...なんてことも十分あり得ます。

 そのため、会計ソフト代であったり経理の方を雇うのであれば給料だったりと、費用はかかりますが、今後のためにも自計化をすることをお勧めします。

 

②創業当初は外部委託でもいい

 創業時は、何かと資金が出ていくことが多く、預金が減っていく一方です。(私もそうでした。)

 そういう状況下で、経理の方を雇い固定費を払うのは、かなりのリスクを伴います。

 経理の方を雇わずにご自身でやる、とおっしゃる経営者の方もいらっしゃいますが、簿記の知識をお持ちでない場合だと、創業当初は他にもやることが数多くあるため、勉強する時間はないと思います。やみくもに、とりあえず入力したとしても、あとで修正が入るだけで、修正の件数が多すぎると追加料金が発生することもあります。

 経理の方を雇う予定もなく、経営者ご自身に簿記の知識が無い場合には、資金のない創業当初であれば、記帳代行会社や顧問税理士に記帳を依頼するのも、立派な経営判断と思います。

 

③外部委託先は、記帳代行会社?税理士事務所?

 外部委託先は、大きく二つに分けることができ、記帳代行会社か税理士事務所かに分けられます。

 どちらかというと、税理士事務所のほうがいいと思います。

 これは私が税理士だからというわけではなく、効率の観点からです。

 記帳代行会社に依頼すると、その会社では税務申告までは出来ないため、税理士と提携しているところがほとんどです。

 提携している税理士は、記帳している期中は一切帳簿を見ないため、決算の金額が固まってから見ることになります。修正が発生することも多く、依頼者が受け取っていた試算表と異なる数値になることもあります。申告作成料も、当然別途請求されます。

 また、依頼先は記帳代行会社のため、税務相談等は基本的に受け付けていないところもあります。(税務相談は税理士のみに許されている独占業務になるため、その他の者が相談内容に回答してしまうと罰せられます)

 その点、税理士事務所に依頼をすれば、記帳から申告作業までワンストップで依頼することができ、期中にわからないことがあれば相談することもできます。

 実のところ、記帳代行料金も、多くの税理士事務所は記帳代行会社よりも、安いところが多いように思います。(ちなみに、弊所では5,500円/月から承っています)

 

◆当事務所の場合

 当事務所は自計化を推奨していますが、記帳代行サービスも実施しています。

 記帳代行サービスでは、一部お客様にエクセルにて作成して頂く資料もありますが、月5,500円(税込)からと非常にリーズナブルな価格設定になっております。

 また、創業融資のお手伝いや、その後の手続き等についても対応しています。

 ご依頼により、記帳代行・税務相談・申告に加えて、融資を受けやすくためのお手伝いや、日々の資金繰りなどに必要な資料を提供することにより、資金体力のある事業づくりのサポートをしております。

 会社を設立するところからのサポートも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 お会いできることを楽しみにしています。

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