【お金】NISA、iDeCo、小規模企業共済
何を利用するべき?

 老後資金2,000万円問題を皮切りに、貯蓄から投資に考え方がシフトしてきています。

 これは個々人がそう思っているだけでなく、政府もそのような方向になるように誘導しており、実際に素人でも投資しやすいよう、投資の壁を感じさせにくいように『NISA』や『iDeCo』が出てきました。

 会社役員の方や個人事業主の場合には、この2つとは別に、従来からある『小規模企業共済』も選択肢の一つに入るのではないでしょうか?

 そこで、NISA、iDeCo、小規模企業共済を並べることによって、どの制度を利用するのがいいか検討しみました。

 ※令和5年度税制改正大綱の内容を考慮して、再度記事を書き直しています。


 ・NISAとは?
 ・iDeCoとは?
 ・小規模企業共済とは?
 ・節税の観点からみた場合
 ・資金の観点からみた場合
 ・結局、どれを利用するのが一番いいの?
 ・当事務所の取り組み

 

◆NISAとは?

 NISAには「一般NISA」「積立NISA」「ジュニアNISA(2023年で終了)」がありますが、 令和5年度税制改正大綱により、2024年からは「新しいNISA」として統合されます。

 「新しいNISA」には一般NISAの考え方を引き継ぐ「成長投資枠」として、積立NISAの考え方を引き継ぐ「つみたて投資枠」として、併用することが出来るようになります。(従来は、一般NISAと積立NISAの併用は出来ず、選択しなければなりませんでした。)

 大きな改正の一つに、年間の投資上限額が、一般NISAは「成長投資枠」として240万円(従来は120万円)、積立NISAは「つみたて投資枠」として120万円(従来40万円)に拡充されました。

 また、非課税限度保有額が新たに設定されて、生涯で投資できる限度額が1,800万円(成長投資枠は1,200万円)までとなります。

 ※1「つみたて投資枠」の対象金融商品は、本来の目的が長期積立であることから、高レバレッジ型及び毎月分配型の投資信託等が除外されています。

 ※2 変更となった「新しいNISA」の詳しい内容については、こちら(改正によってNISAはどう変わった?お得になったの?)をご覧ください。

 

◇特徴1

 通常、株式や投資信託等で得た利益には所得税が課せられますが、NISA口座内での運用であれば利益に課税されることはありません(新旧ともに)

 

◇特徴2

 旧NISAでは非課税保有期間(投資した金融商品が非課税である期間)が、一般NISAでは5年間、積立NISAでは20年間でした。

 NISAでは保有期間が過ぎると課税されてしまうため、その対処として一般NISAにはロールオーバーという、非課税枠内であれば移管が可能な制度が設けられていました。(積立NISAはなし)

 しかし、新しいNISA口座では、非課税保有期間が無期限となりました。そのため、新しいNISAにはロールオーバーがありません。

 

◇特徴3

 旧NISA口座及び新しいNISA口座内では、運用益や売却益が課税されない代わりに、損失が生じても一般口座のように、確定申告をすることによって可能な他の株式等の配当や売却益と相殺したり、損失の繰越控除をすることが出来ません。

 そのため、運用が上手くできていない状態だとNISA口座を選択している意味がなくなってしまいます。

 

◆iDeCoとは?

 iDeCoとは、国民年金基金連合会が主催する『確定拠出年金』です。

 『確定拠出年金』とは、拠出額は確定していて(毎月同額を拠出して)、戻ってくるお金は確定していない(変動している)ものを言います。形態は、年金としても一時金としても受取可能です。

 ※iDeCo口座では、金融機関に関係なく国民年金基金連合会に対する手数料が発生します。

 

◇特徴1

 拠出した掛金が、全額所得控除となり「掛金×税率」分の税金が安くなります。

 

◇特徴2

 iDeCoで拠出した掛金はファンドで運用されます。運用した結果、利益が出たときには通常所得税が課税されますが、iDeCoで運用した場合には課税されません。

 そのため、運用期間中(掛金拠出中)にiDeCoに関する税金が課せられることはありません。

 またNISAと同様に、運用により損失が生じても、一般口座のように確定申告による他の株式等の配当や売却益との相殺や、損失の繰越控除をすることが出来ません。

 

◇特徴3

 65歳まで掛金を拠出することが出来ますが、60歳まで解約することは出来ません。投資とはいえ、年金の手段の一つとして考えられて創設されているため、60歳というキーワードに縛られています。

 iDeCoでは老齢給付金として運用した資金を受け取ることができますが、その受け取り方(一括・分割)により所得の種類が異なってきます。

 一括:退職所得(控除額は運用期間による)
 分割:雑所得(公的年金等)

 

◆小規模企業共済とは?

 小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が定める小規模の事業に属する会社役員や個人事業主が加入できる、一種の外部積立退職金制度です。

 

◇特徴1

拠出した掛金が、全額所得控除となり「掛金×税率」分の税金が安くなります。

 

◇特徴2

 共済加入者は、その拠出期間・金額を基に中小機構より貸付を受けることができます。

 

◇特徴3

 あらかじめ定められた事由に従って、中小機構より振込入金があります。振込入金の種類は「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約返戻金」の4種類あり、それぞれ入金額が異なります。

 小規模企業共済もiDeCoと同様に、事由の種類や入金の受け取り方(一括・分割)によって所得の種類も変わり、納税する金額も異なってきます。

 共済金を受け取る場合は、拠出期間が36ヶ月を超えれば元はとれますが、もし65歳未満で自主的に解約する場合には共済金でなく解約手当金となり、拠出期間が240ヶ月超でないと掛金を下回った金額を受け取ることになります。

 ・共済金A・共済金B:一括⇒退職所得(※) 分割⇒雑所得(公的年金等)
 ・準共済金:退職所得(※)
 ・解約手当金:一時所得

 (※)控除額は掛金の拠出期間による

 

詳しくは、『【節税】小規模企業共済への加入で貯蓄を増やしましょう』をご覧ください。

 

◆節税の観点からみた場合

 節税の観点から見た場合には、3つの制度とも有利ですが、所得が大きければ大きい人ほど、NISAよりもiDeCoや小規模企業共済の方が有利です。

 その投資額(掛金)について見てみると、その掛金全額が所得控除であるiDeCoや小規模企業共済は、所得が大きければ大きいほど控除できる金額が大きくなります。これは、その分税金が安くなり、実質負担額が少なくなるということです。そのため、拠出額がそのまま負担額になるNISAに比べて有利になります。

 また、入金時の税金関係については、NISAはその口座内であり限度額範囲内であれば一切税金はかかりませんが、iDeCoや小規模企業共済でも退職所得となるように解約や受取方法を操作すれば、ほぼ税金はかかりません。

(20年掛金を拠出し続けた場合には、入金額から800万円を控除した残額の1/2のみが課税対象になります)

 一方、所得が少ない方にとっては、iDeCoや小規模企業共済の掛金全額が所得控除となっても、もともとの税率が低いためそこまで節税の恩恵を受けることができません。

 iDeCoの場合には年齢制限があったり、小規模企業共済の場合には、掛金全額返還までの期間が最長で20年かかることもあり、NISAの方が結果的に有利となる場合があります。

 ただし、NISAは利益が出てから初めて節税効果が生まれる制度であるため、所得が少ない場合には、まず生活防衛資金を確保してから始めるようにしましょう。

 

◆資金の観点からみた場合

 3つの商品は全て老後資金のために創設されていますが、NISAやiDeCoは実質は投資であるのに対して、小規模企業共済は純粋な外部積立です。

 拠出時は、所得控除により税金が安くなる小規模企業共済やiDeCoの方が、実質負担額はNISAに比べて少なくなります。

 入金時は、入金リスクをとりたくないのであれば小規模企業共済ですが、自己解約など一時所得として納税義務が発生した場合には、実質手取額が少なくなり、全くリスクが無いわけではありません。

 その点、NISAは非課税であるため、手取りが減ることなく、儲けを全額受け取れます。

 iDeCoは一括受給として退職所得とすれば税金はほとんどかからないので有利なように見えますが、多少なりとも運用リスクがあります(インデックス投資がメインのためリスクは大きくはありません)。また、金融機関を問わず、若干の手数料が発生します。

 以上を勘案すると、加入時から入金時までの実質手取額にて、一番リスクが少ないのはiDeCo(運用リスクが少なく手数料も少ない)、大きいのは小規模企業共済(一時所得の懸念)かと思われます。

 

◆結局、どれを利用するのが一番いいの?

 個々の所得や環境によって、どれが有利なのか変わってきますので、一概にはいえません。

 例えば、iDeCoであれば60歳までは資金はロックされてしまいますし、小規模企業共済であれば20年未満の自己都合解約ではこれまで拠出してきた掛金を下回る返戻金になり、一時所得として税金計算をしなければなりません。NISAは、そもそも利益を出さないと意味がありません。

 また、今後何十年かの間に急遽資金が必要になって、積立が出来なくなる可能性もあります。

 下記は個人的意見になってしまいますが、どれを一番最初に始めるのが適切なのかをお伝えいたします。

 ご加入の際の判断材料の一つにしていただけると幸いです。(全て個人的な意見ですので、運用は自己責任でお願いします。)

 

◇小規模企業共済を最初に加入しましょう

 最初に加入したほうがいいのは、小規模企業共済です。

 自己都合による解約となったとしても最低限掛金分は頂きたいものです。掛金分をもらうには20年間拠出し続けなけばなりません。そのため、拠出期間をかせぐためにも、1,000円(最低拠出額)でもいいので早いうちに加入しましょう。

 所得が少ないときには節税効果はほぼ得られませんが、早めに拠出期間をかせいでおくことにより、リターンリスク(一時所得となるリスク)をヘッジすることができます。所得が大きくなるにつれて徐々に拠出額も増やしていけば、節税効果も大きくなり、加入期間全体の実質手取額も増えていきます。

 また、拠出期間は拠出額をベースとして事業資金を借りることも可能です。

 急遽資金が必要になったときには、中小機構から借入をすることによって、解約をすることなく資金を確保することができます。(中小機構からの借入は、金融機関からの借入に比べて手続きが簡単で、利率も安くなっています)

 

◇生活防衛資金を確保してください

 NISAであれ、iDeCoであれ、小規模企業共済であれ、必ず資金の余裕をもって実行してください。

 資金の余裕がいくらぐらいが妥当なのかは、生活防衛資金が参考になります。

 生活防衛資金は、一般的に『1ヶ月の生活費×6』と計算することができます。この資金を常に保有しておくことが理想ですが、これから拠出を開始したとしても、生活防衛資金が貯まる算段があるのであれば、待つ必要なく始めても構わないと思います。

 

◇NISAやiDeCoはどうする?

 小規模企業共済のあとにNISAとiDeCoどっちかを始めるのであれば、iDeCoを始めてください。

 NISAは投資時・運用時・売却時いずれも税金はかかりませんが、iDeCoは投資時(掛金拠出時)は所得控除があり、運用時はNISAと同様に非課税、売却時(リターン時)は一括受給を選べば退職所得となり税金面でかなり優遇されています。年齢制限はありますが、10年以上拠出し続ければ60歳には受給することができます。

 小規模企業共済ほど拠出期間は長く設定されていないため、iDeCoは小規模企業共済の次に検討してください。

 ※NISAも非課税として魅力的ではありますが、やはり利益が出てなんぼの制度でもあるため、今回は選びませんでした。ですが、長期投資の観点からみれば、2024年以降の「新しいNISA」は魅力的な制度に変わってきていると思います。

 詳しくはこちら(改正によってNISAはどう変わった?お得になったの?)をご覧ください。

 

◆当事務所の取り組み

 当事務所では、ただ申告書を作成するだけでなく、資金面も考慮しながらお客様と打ち合わせをしています。

 節税をするときには、ただ支出をして納税額を減らすだけの無駄な節税を極力避け、お客様と相談しながら、後々有益となる節税をご提案いたします。

 また、税務申告のほかに、経営分析や資金繰りにも力を入れております。

 資金計画をこれから実施していこうという方、再度検討したい方など、資金体力のある会社づくりを目指したい方、お気軽にご連絡ください。

 

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