【資金調達】金融機関の損益計算書の見方(改善編)

 【資金調達】金融機関の損益計算書の見方(評価編)では、金融機関の損益計算書の評価基準に着目しましたが、改善編では、融資審査上、どのようにすれば損益計算書の見栄えを良くすることが出来るかを説明します。

 見栄えを良くするのに、粉飾なんて必要ありません。

 いま決算書に計上している勘定科目について、もう一度内容を確認して、その性質に見合った表示区分になっているかの確認だけで十分です。

 

 ・特別利益に計上しているもので、営業外収益又は売上高に計上できるものはないか
 ・営業外収益に計上しているもので、売上高に計上できるものはないか
 ・販売費及び一般管理費に計上しているもので、営業外費用又は特別損失に計上できるものはないか
 ・営業外費用に計上しているもので、特別損失に計上できるものはないか

 

◆特別利益に計上しているもので、営業外収益又は売上高に計上できるものはないか

 金融機関の損益計算書の評価方法を考慮すると、収益を出来るだけ損益決算書の上の表示区分にすることで、融資審査を有利にすることができます。

 特別利益とは、主に次のものです。

 ・車両や機械、不動産などの固定資産売却益
 ・助成金や補助金
 ・保険金の入金
 ・関係会社の株式の売却益

 これらの項目は、一見すると臨時的な収入に見えますし、簿記の本でも特別利益に計上しましょうと書いてあります。ですが、それはあくまで一般的な話です。

 例えば、不動産売買を主たる業務としている会社は不動産の売却益を特別利益に入れるでしょうか?答えはNOです。不動産売買会社は、不動産に関連するものは棚卸資産として、売上高と売上原価に計上するようになっています。

 このように、会社の業種であったり取り扱う商品によって、収益の表示区分は異なってきます。

 たとえ売上高には計上できなくとも、営業利益への計上も考えましょう。

 もし、保険金の入金や助成金・補助金を、たまたま一回だけでなく毎年のように継続して受け取っていれば、売上高に計上することは難しくとも、”臨時的”ではないため、営業外収益に計上することも検討してみましょう。

 

◆営業外収益に計上しているもので、売上高に計上できるものはないか

 営業外収益には、次のものがあります。

 ・受取利息、受取配当金
 ・売買目的有価証券の売却益
 ・自社ビルの一部分の賃貸料
 ・製造業などのスクラップ売却益
 ・為替差益

 営業外収益は、特別利益よりも売上高に計上できる可能性が高いです。

 売上高に計上される収益は、主たる事業を行った結果生じた継続的な収益です。

 特別利益は臨時的な要素が強いですが、営業外収益は継続的な要素が強いため、売上高との違いは、主たる事業内容に該当するか否かだけです。そのため、営業外収益のほうが、特別利益に比べて売上高に計上できる可能性が高いのです。

 売上高に計上するためには、主たる事業を広義に考えます。

 具体的には、謄本の目的にかかれている事業であれば主たる事業と考えます。

 例えば、商品の卸売業を営む会社が、自社ビルの一部を賃貸している場合です。

 この会社の謄本の目的に「不動産賃貸業」と明記されていれば、そもそも会社を設立する目的に賃貸業が含まれていたということです。ということは、賃貸による収益は、その会社の主たる事業の一貫であると考えることができます。

 このような場合には、賃貸収入を、その他の売上とは別科目で売上高の表示区分に計上しましょう。

 

◆販売費及び一般管理費に計上しているもので、営業外費用又は特別損失に計上できるものはないか

 金融機関の損益計算書の評価方法を考慮すると、費用を出来るだけ損益決算書の下の表示区分にすることで、融資審査を有利にすることができます。

 販売費及び一般管理費には、事業を継続していくうえで『売上を出すための費用』や『事業の維持費』が計上されていて、主に売上原価以外の費用が計上されています。

 この表示区分のものでも、営業外費用又は特別損失に計上できるものはないか見直してみましょう。

 例えば、従業員の退職金は、簿記の本では販売費及び一般管理費に計上するようにと書かれていますが、果たして退職金は継続的に発生するでしょうか?もし継続的に発生するのであれば、そのまま販売費及び一般管理費のままですが、ほとんどの場合は臨時的なものだと思われます。

 そうすると、臨時的なものである特別損失に計上できる可能性が出てきます。

 そのほかにも、引っ越し費用であったり、事業拡大のための新店舗にかかる諸経費なども、販売費及び一般管理費ではなく、営業外費用や特別損失に計上できるものと思われます。

 

◆営業外費用に計上しているもので、特別損失に計上できるものはないか

 営業外費用には次のものがあります。

 ・売買目的有価証券の売却損
 
・支払利息
 
・貸倒損失(貸付金など)
 
・為替差益

 上記の販売費及び一般管理費の場合と同じように考えてみましょう。

 例えば貸倒損失であれば、貸倒なんて経常的に出てくるものでもなく、むしろ発生させたくないものです。そのようなものは、臨時的であると考えれるため、特別損失への計上を検討しても良いと思います。

 特別損失の計上を検討するポイントは、『臨時的』かどうかがポイントです。


 ここまで説明してきたように、収益・費用を計上するときには、簿記の本に書いてあることをそのまま鵜呑みにしないでください。簿記の本に書いてあるのは、世間一般的なことでだけです。

 収益・費用ともに、必ずその性質を見極めたうえで、計上するように心掛けてください。

 

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