【資金調達】金融機関の損益計算書の見方(評価編)

 金融機関が融資審査をするうえで、一番重要視しているのは決算書です。

 決算書は、金融機関が融資審査のベースとしている格付けの評価に直結していますし、連続した複数の事業年度を見ることで、経営者の考え方や方向性を見ることも出来ます。 

 決算書には、貸借対照表と損益計算書がありますが、まず損益計算書の見方から説明していきます。

 自社の決算書、個人事業主の方であれば確定申告書に添付されている損益計算書を見ながら読み進んでいただけると、自信の事業の評価が、ある程度把握できるのではないかと思います。

 ※参考として、金融機関からの評価の一覧表をケース毎に記載しています。(5点評価で厳しめにしています)


 ・緩やかな上昇カーブを描くのが理想
 ・損益計算書全体に共通する見方
 ・売上高の見方
 ・売上総利益の見方
 ・営業利益の見方
 ・経常利益の見方
 ・まとめ
 ・当事務所の取り組み

 

◆緩やかな上昇カーブを描くのが理想

 融資をするときに、金融機関が会社又は個人事業主(以下、会社等といいます)に対して最も恐れているのは、貸し倒れすることです。

 融資審査では決算書をもとに、返済を滞りなく継続することが出来るのか、この会社等の事業に成長性はあるのか、を見てきます。

 即ち、”融資先の事業が常に上昇している”ことが、金融機関にとっての一番の安心材料になるわけです。

 数年間だけ例年の何倍もの利益を出していても、思っているほど評価されません。

 それよりも、地道にコツコツと利益を出し続けている会社等の方が評価が高くなります。

 これが、緩やかな上昇カーブを描くことを理想とする理由です。

 

◆損益計算書全体に共通する見方

 金融機関が、融資審査をするうえで理想とするのは、緩やかな上昇カーブを描くことだと述べました。

 このことからわかるように、金融機関が決算書を見るときには、前期との比較を重要視しています。もっと言えば、前期との比較だけでなく、おおよそ3期分~5期分の比較(流れ)を見て評価しています。

 金融機関の損益計算書の見方を知るためには、まずは前期との比較に着目するようにしましょう。

 

◆売上高の見方

 売上高では、前期に比べて増加しているのか減少しているのかを見ています。

 ・増加しているのであれば、なぜ増加したのか。
 ・減少しているのであれば、なぜ減少したのか。そして減少原因は何か。

 を他の数値と併せて評価しています。

ケース別による金融機関の評価
売上高 UP DOWN
評価 5 3

 

◆売上総利益の見方

 売上総利益では、その”数値の増減”のほかに、”売上総利益率(売上総利益÷売上高)”と”売上高の増減”を併せて見ています。

 例えば、売上高が増加していても、売上総利益が減少していては良い評価が得られませんし、売上高が減少していても、売上総利益が増加していれば良い評価が得られやすいです。

 売上総利益を見るということは、そのまま売上の原価である仕入や外注の金額・割合を見るということでもあり、事業の主たる商品又はサービスの付加価値や効率性を見ていることになります。

ケース別の評価
売上高 UP UP UP DOWN DOWN
売上総利益 UP UP DOWN UP DOWN
売上総利益(率) UP DOWN DONN UP UP
評価 5 4 3 3+ 3

 

◆営業利益の見方

 営業利益では、その”数値の増減”のほかに、おもに”営業利益率(営業利益÷売上高)”と”販売費及び一般管理費”を併せて見ています。

 営業利益は、金融機関が融資審査をするうえで、最も重要視している利益です。

 売上総利益は主たる商品又はサービスの付加価値及び効率性を見ているのに対して、営業利益は販売費及び一般管理費が含まれているため、その会社等の営業全体の収益性を見ています。

 そのため、仮に売上総利益や売上総利益率が良い数字が出ていたとしても、営業利益がマイナスであったり、営業利益率が減少していると、融資審査上では懸念事項に挙げられてしまいます。

 一方、売上総利益などが良くなかったとしても、営業利益が良いと評価されやすくなります。

 なぜかというと、事務所の賃料や給与等の事業維持費のコストパフォーマンスがよいと判断されて、その経営力が評価されるからです。

ケース別の評価
売上高総利益 UP UP UP DOWN DOWN
営業利益 UP UP DOWN UP DOWN
営業利益(率) UP DOWN DOWN UP UP
評価 5 4 3+ 4- 3

 

◆経常利益の見方

 経常利益では、その”数値の増減”のほかに、おもに”経常利益率(営業利益÷売上高)”と”営業外収益・営業外費用”を併せて見ています。

 経常利益は、金融機関が融資審査をするうえで、一番最初に見てくる利益です。

 経常利益には、主たる営業活動による利益のほかに、ある程度継続的に発生する営業活動以外の収益・費用が含まれているため、融資の返済源資がどのくらいあるのか判断することができます。そのため、一番最初に見てくるのです。

 この利益がマイナスである場合に融資を受けたいときには、注意が必要です。

 経常利益がマイナスでも、営業外費用が大きいことが原因で営業利益はプラスであれば、まだ融資の可能性はありますが、営業利益もマイナスだと、融資を受けるのは難しくなります。

ケース別の評価
営業利益 UP UP UP DOWN   DOWN
経常利益 UP UP DOWN UP   DOWN
経常利益(率) UP DOWN DOWN UP   DOWN
評価 5 4 4- 3+   2

◆当期純利益の見方

 当期純利益は、融資審査を行う上で、あまり重要視されていません。

 なぜかと言うと、当期純利益には、その期に臨時的に発生した特別利益や特別損失が含まれてしまうため、継続的な事業の状態を見るには適さないからです。

 もし当期純利益がマイナスだとしても、経常利益がプラスで、マイナスとなった原因が不動産売却による損失のような特別損失が原因であれば、融資審査に大きな影響は及ぼしません。

 融資面談のときに、なぜこのタイミングで売却したかを聞かれるくらいです。

 ただ、もし逆の場合で、経常利益がマイナスで当期純利益がプラスである場合には、なぜ経常利益がマイナスになったのかを問われることになります。

 

◆まとめ

 自社の損益計算書の評価はどうでしたか?

 金融機関は、これまでの損益の流れを重要視していて、特に前期との比較を重視しています。比較するなかでも、ただ増加してればOK、減少してたらNGという単純なものでなく、その利益だけで評価できるものもあれば、総合して評価するものと様々です。

 次回は、金融機関へ融資の申込をすることを前提に、損益計算書の見栄えを良くする方法を紹介します。(粉飾とかではありませんよ?)

 

◆当事務所の取り組み

 当事務所では、税務相談や税務申告のほかに、資金繰りや資金調達、経営分析に力を入れております。

 資金調達を行う際には、経営分析をベースとして、どの程度資金調達できるかを検討するとともに、出来る限り融資可能性を高めるためのサポートをいたします。また、資金計画を初めて実施される方は、資金繰り表の作成サポートもしております。

 資金調達をお考えの方、資金計画を実施してみたい方・再検討してみたい方など、資金体力のある会社づくりを目指したい方は、お気軽にご連絡ください。

 また、創業融資にも力を入れているため、創業をお考えの方も、お気軽にご相談ください。

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